第五章 トリスタニアの休日
第一話 その男執事?
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居酒屋である。
だがしかし、何故か特に違和感を感じない。
執事の胸の中にいる少女も、執事がいることに対し何も言わず、ただ口を半開きにしながら少女が執事に見とれている。苦し気に手足をばたつかせる荒くれ者の首元に、執事の手がガッチリと食い込んでいる。荒くれ者は顔を青紫色にしながら、必死に首元に置かれた腕を振り払おうしているが、執事の腕はビクともしない。執事は全く笑っていない目をしながらニッコリと笑い、腕にさらに力を込める。
「過度の接触はおやめください」
くぐもった声が荒くれ者の喉の奥で響き、机の上に倒れ込む。
「どうやら飲み過ぎのようですね」
肩を竦め、後ろに立つ少女に肩ごしに笑いかける執事。ポーッと赤らんだ呆けた顔で、少女は自分より遥かに高い位置にある執事の顔を見上げている。何も応えず呆然としている少女の様子に、執事が首を傾げながら少女の腕を取る。執事に身体を触れられビクリと震える少女。真っ赤な顔で執事を見上げる少女が、何かを言おうと口を開き、
「何やってんのよシロウッ!!」
「痛っ!」
何も出ることなく固まった。
「全くちょっと目を離すとこれだもの。いくら何でも節操なさすぎよ」
「いや節操なさすぎと言われてもな? しょうがないだろ絡まれていたんだから」
「なら助けたらさっさと戻ってきなさいよっ! べたべた触ることないでしょっ!」
「いやべたべたは――」
「触ってたッ!!」
「あ〜……分かった分かった。今度から助けたらさっさと戻ってくる、だからルイズもさっさと給仕に戻れ」
「む〜分かってるわよ」
頬を膨らませ、上目遣いで睨みつけていたルイズは、士郎の言葉に不満気な顔をしながらも素直に従って給仕を呼ぶ客に向かって歩いていく。肩を怒らせながら去って行くルイズの後ろ姿を、苦笑を浮かべ見送る。
一つ溜め息をつくと、気を取り直すように首を振り、店の奥に戻ろうと踵を返――
「何お尻触ってんのよッ!!」
「グハァ!」
さず客の胸ぐらを掴み、殴りかかるルイズの下に歩いていく。客と少女達の悲鳴が響く中、士郎の脳裏にここ……『魅惑の妖精』亭で働くことになった経緯が走馬灯のように流れていく。
はあ……凛もそうだったが。どうしてこう俺の周りにいる者達は、賭け事になると熱くなるんだ。
……絶対にルイズに金は預けないぞ。
ことの起こりは三日前の朝のことだった。
魔法学院が夏期休暇に入るということから、ルイズの部屋にルイズ、シエスタ、ロングビル、キュルケ、タバサそして士郎の合わせて六人が集まり、夏季休暇の予定について士郎抜きで話し合いを行なっていた時のことだ。夏季休暇の予定を
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