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歌集「春雪花」
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 棚引ける

  雲そ流るゝ

    あかね空

 見なば侘しき

    夕月夜かな



 遠く…日が落ち切らぬ空に棚引く雲…。

 燃えるような朱に染まり…ただただ虚しくなってゆく…。

 ふと見れば淡い月が昇り、その消えそうな光に…世の侘しさを憶える…。

 彼にとって私は必要ない…ならば…世界にも必要ないだろう…。


 そんなことを思う…秋の夕暮れ…。



 霞み空

  幽かに洩るゝ

   月影に

 秋虫鳴かば

   小夜ぞ淋しき



 薄雲に覆われた夜空…淡い月が仄かに照らしている…。

 草むらからは秋虫が鳴く声が響き、何とも言い難く…淋しさだけがつのって行く…。

 淋しさ…きっと彼を想わなければ感じまい…。


 忘れられないとは…本当に辛いものだ…。




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