第三章
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「本当にどんなジャーナリストなのかな、この人も読者の人も」
「宗教でしょうか」
それもカルト的なものではないかとだ。稲葉も首を捻りながら言う。
「これは」
「まあね。ああした運動というのは確かに宗教めいているけれど」
「じゃあやっぱり」
「宗教といっても色々なんだよ」
歯科医、医者に相応しく理知的だがそこに悲しみという感情も含ませてだ。矢作は言った。
「いい宗教もあれば悪い宗教もあるんだよ」
「そしてこれはですね」
「カルトだね」
まさにそれだとだ。矢作も言った。
「それになるね」
「そうですね。本当に」
「とにかく。この磨き方はないよ」
「はい、本当に」
「よくこんなことを書けるものだ。そして信じるものだよ」
「信じる人も信じる人ですね」
「全くだよ。いや」
ふとだ。矢作はだ。
ここであることに気付いた。そのことは。
彼はその顔を急に緊張したものにさせてだ。こう稲葉に話した。
「ひょっとしたらだよ」
「ひょっとしたらといいますと」
「最近患者さんで虫歯の人が多いよね」
「はい」
「それで抜く人が多いけれど」
このことを思い出してだ。矢作は稲葉に話すのだった。
「虫歯になるのはね」
「歯を磨かないからですね」
これは常識だった。特に歯科医の世界では。
「そうですよね」
「そうだよ。見ればどの患者さんもね」
「歯が汚いですね」
「少し患者さんに聞いてみようか」
真面目な顔でだ。矢作は稲葉に言った。
「この雑誌を読んでいるかどうかね」
「そうですね。この雑誌結構本屋にも並んでますし」
「図書館にもあるよ」
発行部数は少ないがそれでも所々に置かれているのだ。影響力は小さくはない。
「だから。読んでいるとね」
「その影響で」
「その可能性はあるよ」
「じゃあ患者さん達に聞いてみますか」
「そうしよう。この雑誌はそもそもそういう雑誌なんだ」
宗教的、それもカルトな雑誌だというのだ。偏った市民団体等が読む。
「その影響を受けてのことならね」
「問題ですね。じゃあ」
稲葉も真剣な顔で矢作の言葉に頷いた。こうしてだった。
二人は自分の患者達に尋ねた。確かに元々歯磨きをなおざりにしている患者もいた。その他にも虫歯になりやすい体質の患者もいた。だが。
患者の中のかなりの割合がだった。二人が危惧した通りあの雑誌を読んでいた。それで手作りの歯ブラシで歯磨き粉を使わないで歯を磨いていたのだ。
その結果虫歯になったことが明らかになった。それでだ。
矢作は診察の合間の歯科の治療室でだ。難しい顔で稲葉に言った。
「予想が当たったね」
「そうです
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