第二十四話:プレデター
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情を浮かべており、恐る恐る手を差し出してきている。
「まさかお前とはな、こんな度胸があるようには見えなかったが?」
「今まではありませんでした……でも、好きな人を殺されたら反感の一つも抱きます。隊長、貴女にはもう従えません!!」
涙を浮かべる彼女の胸にはドッグタグが一枚増えていた。
「彼は重症を負っていましたが、助けられたはずです!何故殺してしまったんですか!?」
エレナは合点がいったとばかりに表情を歪める。あの時、ブービートラップで死にかけた男。名も顔も忘れた歩兵に引導を渡したことを根に持っていたのだ。
「お前は馬鹿か!籠城戦において死に損ないは『居るだけで厄介な存在』なのだぞ!?役に立たない、負傷具合によっては疫病を撒き散らし、健常者よろしく飯を食うし排泄だってする!その世話すら他人任せで人的リソースを更に圧迫する疫病神だ!これから隊長の死の真相を糾明するために更なる苦境に身を投じんとするこの状況で、お前の軽率で甘ったれた行動がどれだけの不利益を撒き散らしたのか分かっているのか!?」
エレナ・ディートリヒはラウラ・ボーデヴィッヒと同じく、人口の子宮から産み落とされた軍事用の遺伝子強化検体の一人である。故に浮世の常識並びに、軍事以外の些事に疎いことは本人も自覚していた。だが、当の本人はそれ以外の世界に興味はなかった。世間一般の常識は必要な分だけ吸収し、それ以外は全て鍛錬に充てた。
当然、真反対の選択を採る者も居た。眼前の少女は外の世界を知ろうと努め、社交的になっていった。そして、生まれの都合上限定されたコミュニティの中で未来を共に歩みたいと願うような人を見つけたのだ。
嘆くべきは少女たちはお互いのことを自らの尺度で考えるということでしか選択肢を持とうとしなかった事だった。故に少女はエレナに自らの恋人を否定され、エレナは激情した少女から9mm弾を胸に受けることになった。
その時、死の旋風が吹き荒れた。この場所に居た人間達は、何が起きたのかさえ理解できぬまま即座に絶命し、文字通り挽肉になった。ただ一人絶命を免れたエレナ・ディートリヒだけはその正体を認識することが出来た。
「織斑……教官?」
眼前に屹立するそれは自らにISのいろはを叩き込み、常に強者たる姿勢を崩さなかった生ける伝説が、戦女神がそこに居た。
「きょ……う、か……ん」
至近距離で打ち込まれた9mm弾は、肺と脊髄を貫通してしまったらしく最早言葉を紡ぐごとに喀血し、四肢は役目を忘れたかのごとく動かない。
──立たねば、敬礼しなければ。
どうにか立とうと藻掻くが、破壊された人体に最早余力はなく、出血多量によって既に色彩を失った視界は遂に闇に閉ざされようとしている。国に弓引いてま
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