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殺人鬼inIS学園
第二十四話:プレデター
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 鏡に映る虚像のように暫し向かい合っていた二人の内、笑みを浮かべていた方が先に背を向けた。

「直ぐに皆に報せろ、久々の歯ごたえのある獲物だ」

エレナはまだ見ぬ獲物への期待を膨らませる中、眼前の少女への興味を捨てた。だが、その少女は警備兵に声を掛けられるまで、ずっとエレナを見つめていた。


 目に見えぬ侵入者は、エレナの期待とは裏腹に黒兎部隊の人間には一切関わらず、警備兵や特技兵といった人物を中心に殺していった。恐ろしいことに、神出鬼没の一言にある潜伏性を持っており、物陰やシャワールームは勿論のこと、食堂のテーブルの下で首を折られて死んでいた者も居た。部下の中には、相手は人間ではなく、軍が新たに開発した生物兵器が投入されたのではないかと怯えるものが出始めた。

「馬鹿馬鹿しい、ISを交代で身に付けろ!ハイパーセンサーがあれば世迷い言も自然と消えるだろう」

 直ぐに待機状態にされていた第二世代IS、シュヴァルツェア・ツヴァイク2機が部隊員に交代で装備されることになった。虎の子たるISを易易と持ち出すということ、短期間で別の人物に装備させることによるコアの調整に不備が生じる可能性があるということで、一部の部隊員と整備員が難色を示したが、エレナは一喝して黙らせた。
 しかし、それさえも侵入者はかいくぐってみせた。その日の夕食、調理師の一人が刺殺されただけでなく、用意されていた夕食に「塩味が足りない」と書かれたメモが残されていたのだ。最早黒兎部隊は侵入者に完全に遊ばれていた。

 侵入者による最初の殺人が行われて4日後、事態は動き出した。一部の歩兵が暴動を起こしたのだ。ISを装備していなかった部隊員2名が拳銃で撃たれて即死し、3名が重軽傷を負った。
 皆、口々に喚き散らす。

「あんたらにはもう付き合いきれない!」

「殺されたくなくて嫌々従ってきたが、あんなに惨たらしく殺されるなら銃殺刑にされたほうがマシだ!」

「今からでも遅くはない!素直に武装解除して赦しを乞うんだ!!」

「そもそも私たちはあなた達の部隊に従う義理なんて無いでしょう!?」

 エレナは理解できなかった。何故今更になってそのようなことを言うのか。ふと眺めてみると、喚き散らす者の大半が此度の蜂起に積極的に参加する旨を表明した者であった。元々待遇に不満を持っていた女尊男卑主義者の士官だったため、実力云々に全く期待していなかったが、曲がりなりにも士官教育を一通り受け、卒業した者だった。なのに今、目の前で出来の悪い新兵のように泣きわめいている。
 これが女尊男卑の歪みに晒された現状だった。天秤も傾けすぎると瓦解する。当然の帰結なのだが、それさえ気付けなかった愚考の極みが眼前の光景として現れていた。

「もう良い。期待した私が馬鹿だった」
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