暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 少年と贖罪の剣
幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第十九話:目覚め
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
た。
 今は赤く染まっている真っ白な壁を背に、その男は怪訝な顔をして立っていた。男の容貌は、控えめに見ても美しかった。まるで人形のような顔だち、スラッとした体躯、恐らくはブロンドであろう長髪を支える冠。姿だけ見れば、NPCと間違えていたかもしれない。だがその声音には抑えきれぬ苛立ちが滲んでいて、思わず委縮してしまうほどリアリティが溢れていた。

「貴方は誰?」

 そうユメが問いかけると、その男はあからさまに表情を歪めた。声音に宿っていた苛立ちが全身に流れ込んでいく様を、ユメは見た。

「実験体風情が、口の利き方がなってないなぁ」

 『実験体』という言葉にユメは槍の柄を握る手に力を込めた。
 間違いなく、この男はこの悍ましい実験に関与している。この実験が何らかのプロジェクトなのだとして、この男がどの程度の立場にいるのかは分からないが、情報を聞き出すことはできるだろう。

「そう、答えるつもりはないってこと。なら、ふんじばってでも聞き出すことにする」

 きっとレンならそうしただろう。敵を倒して、この事件の真相に辿り着いて、皆を開放するだろう。自分に、そこまでできるとは思わない。けれど、何もせずに諦めてなんていられない。

「あまり調子に乗るなよ、凡人。神たる僕に向かって大きな口を叩いたこと、後悔させてやる」

 油断はしない。なにせこの男はすべてが未知数。先程倒したナメクジなど比較にならないだろう。
 息を思い切り吸い、後ろ足に力を込めて、地面を蹴る。

「一撃で決める!」

 今のところあの男の両手に得物はない。勝機があるのならこの一瞬、武器を取り出す前に仕留める。これまで幾つもの修羅場を潜り抜けてきた愛槍はこの手にある。感覚を研ぎ澄ませ、必殺の一刺を心臓へ――――

「うざったいな」

 ドプン、と。まるで水中へ落ちたかのように体が重くなる。それでもなんとか槍を突き立てようと腕を伸ばした刹那、とてつもない重力に思わず膝を折ってしまった。

「うっ…!」

「ありゃりゃ、次のアップデートで導入される予定の魔法だったけど、効果が強すぎたかねぇ?」

 『魔法』が存在することを、ユメはこの瞬間知った。得物など、なくても問題はなかったのだ。
 そうだ、ここはSAOではない別の世界だ。剣の腕で決まっていたあの世界とは違う。その認識の違いを、ユメは今更ながらに痛感した。

「さて、檻から抜け出す悪いネズミには、しっかりとお仕置きをしなくちゃねぇ」

 先ほどまでの苛立ちを孕んだ声とは違う、粘着質な声にユメは身を固くする。なんとか槍を再び握るが、立ち上がることはできない。

「システムコマンド! オブジェクトID≪エクスキャリバー≫をジェネレート!」

 魔法で薄暗くなった部屋が、ま
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ