幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第十九話:目覚め
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樹の葉に覆われている。視線を下に戻すと、湾曲した壁のようにしか見えない幹の一部に、華美な装飾が施された扉が見て取れた。その扉を挟むようにして、巨大な騎士の彫像が屹立する。
「おーーい! 兄ちゃん!」
「ああ、すぐ行く」
スリーピング・ナイツのメンバーは既にその扉の前で集まっていた。元気な三人組は早く挑みたいのかソワソワし始めている。その様を見守る比較的大人しい四人だが、こちらもこちらで興奮は隠しきれていない様子だ。誰も、この後のことなど考えてはいないようだった。こういう様子を見ていると、オレと彼らの価値観の違いを嫌でも突きつけられる。過去の事を悔やんでばかりのオレとは違って、彼らは常に、今を見ている。
「レンさん?」
「ん?なんだ、シウネー」
声をかけてきたシウネーはどこか困ったような顔をしていた。背丈ほどもある杖を握りしめ、こちらの顔を覗き込んでくる。
「いえ、顔色が優れていらっしゃらなかったので……どこか具合でも悪いのかと」
「ああ、なんだそんな事か。少し考え事をしていただけだから問題はないぞ」
努めてなんでもないように振舞って見せる。こういう本心を隠すのは、二年間で巧くなった自信がある。そのことを喜んでいいのかは分からないが、少なくとも今回は役に立ったのだろう。少しの間疑わし気にしていたシウネーだが、表情を変えないオレに根負けしたようだった。
「さて」
剣を扉の前で交差させる彫像の前に立つ。すると、右側の彫像が動き出した。青白い光が兜の隙間から除く双眸から迸り、こちらを見下ろしてくる。
『未だ天の高みを知らぬ者よ、王の城へ至らんと欲するか』
その声が届いたと同時に、ランの前に最終クエストの参加の意思を問うボタンが表示された。ランはオレ達の顔を順番に見て、笑みを浮かべた。ランの指が、迷うことなくイエスのボタンに触れる。
『さればそなたらが背の双翼の、天翔に足ることを示すがよい』
地響きのような音を立てて、中央の扉が開かれる。その轟音が、どうしようもなくオレにアインクラッドのボス攻略戦を思い出させた。首を振って湧き上がる悪寒を飲み下す。もうここはあの鉄城ではないのだから。
「さあ、行きましょう」
ランの言葉に全員が頷きを返す。
最後の戦い、なんて誰も言わない。ただ目の前にある冒険を目いっぱい楽しむ。今この瞬間ばかりは、オレも彼らに倣うことにしよう。
大切な「今」を、蔑ろにしたくはないから。
† †
鳴り響くアラート、真っ赤に染まった空間。尋常ではない事態に、その原因は自分であることを自覚しているユメは、注意深く槍の柄を握りしめた。
「一体、なんの騒ぎだぁ?」
程なくしてその声の主は現れ
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