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ソードアート・オンライン 少年と贖罪の剣
幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第十九話:目覚め
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付け難い存在からの奇襲を受けて若干機嫌が悪かった。幸いそこまで強いモンスターではなかったらしく難なく倒すことができたが、新たな疑問が思い浮かぶ。

「それにしても、ここは?」

 ユメがいるのは途方もなく広い空間の中だった。遠近感を失ってしまいそうな程白く、広大な空間を振り返ると、そこには短い柱のようなものが規則正しく建てられていた。それはユメの真後ろにも存在しており、詳しく覗いてみるがそ柱の内部にはなにもなく、ただ『Error』という文字が発光しているだけだった。首を傾げて、すぐ隣の柱に目を移した。

「――ひっ」

 危うく漏れかけた悲鳴を寸でのところで押しとどめる。信じられない光景に、ユメの瞳に涙が滲んだ。

 その柱に存在していたのは――人間の脳髄だった。
 それらが、ユメが今見ている柱の他にも夥しい量存在している。だとするのならば、この自分の目の前に存在しているこの柱には、つい数瞬前までユメ自身がこのような状態だったということだ。駆け抜ける怖気に震える体を必死に押さえつけて、唇を噛む。

 その時、右端に捉えていた柱に変化が起こった。まるで脳髄を象った宝石のようなそれに幾つもの光が瞬き、その横を様々な数列やら文字やらが流れていったのだ。ユメがなんとか読み取れたのは、『Pain』『Terror』などといった単語だった。

「痛み…それに、恐怖……?」

 そんな、と首を振る。だってそれは、単なるSFの世界の話だ。こんな悍ましい事、人間がやっていいことではない。
 人間の脳を使った実験など、物語の枠から出てきてはダメだ。

「……許せない」

 槍を握る手に力が籠る。
 もう彼女の中に恐怖心はなかった。そんなものは、怒りに取って代わった。
 SAOは確かに、あの英雄たちによってクリアされた。だが自分は今まだ電子の世界にいて、恐らくはここに存在する柱の数だけ、彼女と同じく現実世界に帰還できていない人がいる。それは許してはならない。
 ユメは柱の前にしゃがみ、その表面に手を触れた。

「待ってて。私が、解放してあげるから」

 決意を新たにして立ち上がる。

―――その直後、甲高いサイレンと共に、部屋中が真っ赤に染まった。



†    †



「さぁーってぇ!」

「いっちょ!」

「やっちゃおう!」

 スリーピング・ナイツが誇る元気っ子三人の威勢のいい掛け声に、周りにいたプレイヤーが何事だと目線を向けた。

「なんだなんだぁ?」
「まさか、あいつら世界樹攻略に挑むつもりか?」

 ざわつく周囲を無視して、スリーピング・ナイツの面々は世界樹までの歩みを進めていく。レンは勿論、彼らは注目されることに慣れていたし、奇異の視線を向けられることを気にする人間
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