第七話 今との差異
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置いた瞬間、天龍は風のように走り去っていく。どうやらそれだけアイスを食べたかったようだ。
残された龍田は凰香達に向かってヒラヒラと手を振って天龍の後を追った。その時に黒い笑みを浮かべていたが、凰香が気にすることはない。
二人が立ち去った後、凰香はスマホを取り出して時間を確認する。
時刻は午後6時30分。そろそろ夕飯の時間である。
昼頃に買ってきた食材などはすでに厨房に放り込んである。一応艦娘達には見つからないであろう場所にしまってあるが、給糧艦の間宮には見つかる可能性はある。もし見つかれば、おそらく後で小言を言われるだろう。
時間帯的にもちょうど艦娘達がいる頃だ。彼女達からしたら凰香達は邪魔者みたいな存在なので、顔を合わせたくはないだろう。
だがそれらは小さな問題である。一番の問題は『今現在の食事の状態』がどうなっているかである。
前に榛名と夕立から聞かされた内容の通り、この鎮守府では前任者の戯言により『食事』というものが存在しない。前任者が消えてからはどうなっているのかは未だわからないが、『食事』が存在するかしないかで今後の動きが変わってくるのは確かである。
(できることなら『食事』があってくれればいいけど、そんな都合のいい話は無いのよね)
凰香がそんなことを思いながら歩いていると、視線の先に食堂が見えてきた。
凰香は歩きながら榛名と夕立を見る。榛名と夕立の表情は少し強張っていた。まあ榛名と夕立はこの鎮守府から脱走した裏切り者なので無理もないが。
凰香は榛名と夕立に言った。
「……二人とも、無理しなくていいから」
「……榛名は大丈夫です」
「……夕立も大丈夫です」
凰香の言葉に榛名と夕立がそう返す。すると時雨が言った。
「もし何かあったら、僕がどうにかするよ」
「……ありがとうございます、時雨さん」
時雨の言葉に榛名がお礼を言う。
やがて凰香達は食堂へと辿り着いた。しかし凰香達はそのまま食堂の中へと入るのではなく、今の状態を確認するために壁に沿って迂回する。そして近くにあった窓から食堂の中を覗いた。
食堂の中では多くの艦娘達が各々に別れてスペースを作り、グループで集まって食事をするという至ってごく普通の風景だった。
…………全員が『無表情』である点を除けば。
「………うわ」
凰香は思わず声を出してしまう。予想していたとはいえ、まさかここまで酷い状態だとは思ってもいなかった。それは他のメンバーも同じだったらしく榛名と夕立はともかく、あの時雨が絶句し、防空棲姫は顔をしかめている。表情が変わっていないのは凰香だけだ。
だが、凰香がいくら感情がないとはいえ、この状況が異常だということは理解できる。
厨房
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