暁 〜小説投稿サイト〜
世界をめぐる、銀白の翼
第六章 Perfect Breaker
帰郷/継承
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


ただ、そこの空気だけはすでに失われていた。



唯子と一緒にブラブラしながらそこで待っていると、自分たちが入ってきた扉と同じように入ってくる人影が。
その人影に唯子は振り返り、翼刀は背中越しに語りかける。


「・・・・・やっぱりここに来たんだな」

「召喚されて長く座りっぱなしだったからな。そろそろお前の相手をしてやらなきゃならんだろう」

入ってきたのは、鉄翔剣。この道場の主だった男。

一礼し、道場に足を踏み入れる翔剣。
その表情は、ブレイカーとして戦ったときの物ではなく、息子を見る父親の目であった。


「翼刀。お前にはどうしても伝えねばならんことがある」

「ああ。俺も、親父とは終わらせないといけないものがある」


しかし、息子を見る父の目が――――優しいものとは限らない。
翔剣の物もそれに漏れず、息子の成長を値踏みする様な眼差し。



この親子の最後は、とてもではないが望めるような別れではなかった。

最後の言葉はなんだったか。
その死に顔はどうだったか。

およそ親子の死別にありうる「受け継がれるもの」が、この親子には欠落している。

次世代へと受け継ぐもの。
それは小さかったり大きかったり。時にはない者もあるかもしれない。

だが、この鉄家には絶えることなく受け継がれてきた技術(モノ)がある。


しかし、その時に息子には意識がなく、父は伝える間もなく虚を突かれた。


これはそれを取り戻す戦い。
いまこの二人の戦いは、セルトマンの思惑などから完全に外れたものになる。

原因はどうであれ、これはただ単に―――――


「これは、受け継ぐための戦い――――翼刀、死ぬ覚悟はしたか?」

「受け継ぐ方を殺す気でいってどうるんだよ親父・・・・まあ、確かにそれくらいの覚悟はいるか。唯子!」

翼刀は翔剣から目をそらさずに、先ほど棚から取り出した書物を一つ、唯子に投げてよこす。

かなり古い書物だ。背の部分が紐で閉じられている。
タイトルには縦に筆で「鉄流不動拳 継承ノ儀」と書かれていた。

「これからそれするから。まあ軽く読んどいてくれ」

「え・・・っと。それって、昔話してくれたあれ?」

「昔話したあれだ」

確認をして、唯子が止めるべきかどうか、悩む。

しかし、これは彼ら親子の問題。
「まだ」部外者である自分は口出しできない。無論、翼刀が死ぬような場面になったら飛び込むが。


「わかった。見てる」

「おう。俺のカッコいいところ、しっかり見とけ」


そうして道場の真ん中に、翼刀と翔剣が向き合い立つ。

すでに翼刀の顔からは穏とした雰囲気はなくなり、目の前の男を敵として捕
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ