第六章 Perfect Breaker
帰郷/継承
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ただ、そこの空気だけはすでに失われていた。
唯子と一緒にブラブラしながらそこで待っていると、自分たちが入ってきた扉と同じように入ってくる人影が。
その人影に唯子は振り返り、翼刀は背中越しに語りかける。
「・・・・・やっぱりここに来たんだな」
「召喚されて長く座りっぱなしだったからな。そろそろお前の相手をしてやらなきゃならんだろう」
入ってきたのは、鉄翔剣。この道場の主だった男。
一礼し、道場に足を踏み入れる翔剣。
その表情は、ブレイカーとして戦ったときの物ではなく、息子を見る父親の目であった。
「翼刀。お前にはどうしても伝えねばならんことがある」
「ああ。俺も、親父とは終わらせないといけないものがある」
しかし、息子を見る父の目が――――優しいものとは限らない。
翔剣の物もそれに漏れず、息子の成長を値踏みする様な眼差し。
この親子の最後は、とてもではないが望めるような別れではなかった。
最後の言葉はなんだったか。
その死に顔はどうだったか。
およそ親子の死別にありうる「受け継がれるもの」が、この親子には欠落している。
次世代へと受け継ぐもの。
それは小さかったり大きかったり。時にはない者もあるかもしれない。
だが、この鉄家には絶えることなく受け継がれてきた技術がある。
しかし、その時に息子には意識がなく、父は伝える間もなく虚を突かれた。
これはそれを取り戻す戦い。
いまこの二人の戦いは、セルトマンの思惑などから完全に外れたものになる。
原因はどうであれ、これはただ単に―――――
「これは、受け継ぐための戦い――――翼刀、死ぬ覚悟はしたか?」
「受け継ぐ方を殺す気でいってどうるんだよ親父・・・・まあ、確かにそれくらいの覚悟はいるか。唯子!」
翼刀は翔剣から目をそらさずに、先ほど棚から取り出した書物を一つ、唯子に投げてよこす。
かなり古い書物だ。背の部分が紐で閉じられている。
タイトルには縦に筆で「鉄流不動拳 継承ノ儀」と書かれていた。
「これからそれするから。まあ軽く読んどいてくれ」
「え・・・っと。それって、昔話してくれたあれ?」
「昔話したあれだ」
確認をして、唯子が止めるべきかどうか、悩む。
しかし、これは彼ら親子の問題。
「まだ」部外者である自分は口出しできない。無論、翼刀が死ぬような場面になったら飛び込むが。
「わかった。見てる」
「おう。俺のカッコいいところ、しっかり見とけ」
そうして道場の真ん中に、翼刀と翔剣が向き合い立つ。
すでに翼刀の顔からは穏とした雰囲気はなくなり、目の前の男を敵として捕
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