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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
第百二十四話 夏休みの宿題その六

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「子供の時から」
「そうなんだね」
「それ自体は」
 幾ら独特と言われてもというのだ。
「そうなのです」
「だから芸術もなんだ」
「美術の宿題もです」
「そうしてだね」
「楽しんでいます」
「そのことはわかってけれど」
 僕は小夜子さんの絵でどうしても気になることがあってだ、それで小夜子さん本人にいぶかしむ顔で尋ねた。
「あの、色は」
「色ですか」
「小夜子さん色が黒と赤しかないけれど」
 本当にその二色しかない、もっと言えばペンで描いていて絵の具を使っていない。
「それはどうしてかな」
「はい、そうした絵なので」
「だからなんだ」
「絵の具を使っている絵も描いています」
 そうした絵もというのだ。
「実は」
「あっ、そうなんだ」
「そちらの絵も御覧になってくれますか」
「うん、よかったら」
 僕は小夜子さんに前置きして話した。
「そうしてくれるかな」
「それでは」
 すぐにだ、小夜子さんは僕にその絵の具を使った絵も見せてくれた。それは丁度描いたばかりの絵だった。
 その絵はだ、何というか。
 色使いがわからない、何もかもがだ。
 無茶苦茶というかやっぱり赤があって緑だけじゃなくて何故か青や紫、灰色がある。あと黄色とかもう何でもあった。
 何かあちこちに庭にあるとしか思えないものがあってだ、訳がわからなかった。それで僕は小夜子さんに尋ねた。
「あの、ガーデンだよね」
「はい、そうです」
「そうだよね」
「何か」
「いや、小夜子さんの目にはこう見えて」
 僕はさらに言った。
「描いてるんだね」
「そうです、私の画力で」
「そうだね」
「そうです、そして」
「そして?」
「こうした絵の具で描いた絵もです」
 それもというのだ。
「先生から評価が高いです」
「独特な絵として」
「そうです」
 まさにというのだ。
「よく褒めてもらっていて」
「評価がいいんだね」
「そうなのです」
「ならいいんじゃないかな」
 僕はまた小夜子さんに答えた。
「じゃあ絵の具を使った絵もその絵もね」
「どちらもですね」
「提出するといいよ、ただ」
「ただ?」
「二つ出すんだね」
「そのつもりです」
 こう僕に答えてくれた。
「今回は」
「一つじゃなくて」
「筆が進みまして」
「二つ描いたんだね」
「そうです、絵の具の絵に描き加えるより」
 それよりもというのだ。
「むしろです」
「もう一つ描こうと思ったんだ」
「蛇足はよくないですから」
「ああ、蛇足ね」 
 中国にある言葉だ、蛇は足があると蛇じゃない。それで蛇の絵に足を描いた人はそれで失格となった逸話だ。
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