第一部 少年たち
第四章
ゆりかご
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目が覚めると見慣れた部屋にいた。ついさっきまでいた場所だ。
「あれ、おれは確かルイを助けにこの病室を抜けたはずじゃ。夢だったのか」
今の状況と自分の記憶を照らし合わせる。
(おれはあの時、スサノオと戦っていて……やばい途中からどうなった? 記憶がないってことは夢か?)
「やっとお目覚めのようだな。少年」
病室の扉を背にして黒髪の白いジャケットを着て右手に金のガントレットをしている男が立っていた。その顔つきは見覚えのある顔だった。
「おっさん! 生きていたのかよ!」
おっさんが近づいてきて大きく拳をあげ落とす。
「いってぇ。なにすんだよ、おっさん!」
「生きていたのかよ。はこっちの台詞だ。だ阿保。お前さんがどんだけアナグラの連中に迷惑かけたと思っているんだ」
「迷惑って……もしかしておれがスサノオと戦ったのは夢じゃない?」
「当たり前だ。惚れた女を守るためか。ボロボロの身体に鞭打って行ったんだろ」
「別に惚れてねーよ! そういうのじゃないし」
「ま、それはいいとして、お前さんが移動に使ったバイク。あれおれのだからな。弁償しろよ」
「よくないし、でもバイクと無茶したのはごめんなさい」
おっさんは鼻で笑って、おれの頭に手をのせる。
「ま、おれはお前さんらを怒りに来たわけじゃねぇ。そういうのは他の連中がしてくれるだろ。あれだ、取り敢えず元気そうでよかった」
おっさんは頭から手を離し、近くの椅子に腰を掛ける。
「少年はサキであっていたよな。お前さんにいくつか聞きたいことがあってな」
その時、自分の中でなにかを察した。それはよくへらへら笑っているおっさんの表情がいつになく真剣になっていたから。それにおれとおっさんの関係は深いわけでもない。たぶん、おっさんがおれに聞くこと、おれがあまり好んで話したくない内容だ。まあおっさんもそれをわかった上で聞くつもりだ。
「なんとなく察しているみたいだから手短に言う。あの村はどうした? お姉さん元気か?」
その質問を理解した途端、頭にあの時の記憶が勢いよく流れ込んでくる。うねり声をあげ、片手を顔に当てる。辺りが一面暗闇に包まれる。
「姉ちゃんはあっちで元気にしているよ」
おっさんは少し困った顔をして頭を掻く。
「少年。実はあの後、いろいろあって仲間の大切さや自分を支えてくれる人のありがたみを改めて痛感する出来事があってな。落ち着いてからあの村に行って、見ちまったんだよ」
(あ、やっぱりあのことを知っているんだ。そっか)
「まあ聞いておいて都合がいいが、少年が話したくないなら大丈夫だ」
病室に沈黙が訪れる。暫しの無の後、おっさんが口を開く。
「そうだ、一緒にいたルイって子も命に別状はない。ただ、無茶をし過ぎで当分は休養が必要だ。それとあの老夫婦と孫の三人は無事だが、残念ながらここで
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