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リリなのinボクらの太陽サーガ
秩序のナイトメア
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衝突させる爆弾が仕込んであったわけだ。全く……呆れを通り越して鳥肌が立つぐらい用意周到なことだ。一で十を動かす、最小の動きで最大の結果を引き寄せる。公爵に拾われてからというもの、僕は何度もこの人の底知れなさと無駄のなさに感心させられてきたが、人類種の天敵であるが故に誰よりも人類という存在を知り尽くしている公爵は、僕にとっては最高の師だった。

それにしても彼の修行では何度死にかけたか……というかガチで何度か心臓止まった。その度に力づくで蘇生されては修行再開という、ハートマン軍曹も真っ青になるかもしれないレベルで非人道的な訓練内容だったから、正直思い出すだけで身震いが止まらない。でもおかげで僕はこの短期間で、自分でも驚くほどの力を手に入れた。

それで……ちょいと恥ずかしい話だけど、一度調子に乗って公爵にタイマンを挑んでしまったんだよね、若気の至りで。まあ結果は言うまでもないだろう、借り物だったデバイスが完膚なきまでに壊れ、完全敗北を喫した。何事も調子に乗ってはいけないと身に染みて理解できたのは良いが、しかしあの勝負からは相手を手玉に取る方法を学べたし、いい経験にはなったよ。ただ、その戦闘中に僕は公爵に対して、ある違和感を抱いていた。

「元々拾ってもらった時から感じてたけどさ、公爵ってイモータルのくせにかなり“人間臭い”よね。僕の行動理念……奪われたものを取り戻すために何でもやる思想は公爵と鏡で映したように同じだった。……取り戻したい対象が違うってだけで」

「……今のオレは堕ちた太陽だ。もはや何も照らすことは出来まい。しかし、闇の底に堕ちてでもオレには果たさねばならない目的がある。あの時、命も尊厳も何もかもを失ったあいつらの無念を糧に、そして奴らと同じ業を背負い……永劫の時を戦い続けて来た。全てをやり直すために、オレは全てを捧げて来たのだ」

「かくして次元世界にもあったはずの希望の光は、皮肉にもヒトの手で絶望の闇へ染まり切ったと……。じゃあ公爵にとってはある意味分身とも言える彼を見てたら、なんかむず痒かったりするんじゃないの?」

「そうだな……運命が違えば、ヒトはああも変わるものなのだな。だがそれは、もう片方にも言える」

「辿った運命はかなり似てるのに、彼は絶望に染まらなかった。元から闇を受け入れても屈しない心……いや、魂の形をしてるんだろう」

羨ましい話だ、僕にはそんな強さは無かったんだから。……もし、そんな強さが最初から僕にあったら、あの人達に受け入れられていただろうか? いや、それはあり得ないな。未だアレに心が縛られてるとは、自分の事ながら未練がましくてイライラする。

「ま、どうせ永劫回帰の影響で全部滅ぶんだから、今更やり直す機会が訪れた所で何の意味も無いけど」

これから語るのは全て公爵から聞いた話
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