第一話「主人公は……」※修正
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岩と崖、砂のだけの世界、そこは「時の狭間」と呼ばれる三岳のトンネルがいくつも存在する、モニュメント・バレーを思わせる荒野の異空間であった。
その、寂しくもあらゆる時間、過去と未来のはざまであるこの空域の大地を貫くように数両編成の列車が走り抜けた。
時の列車「デンライナー」であった。その車内には大勢というほど乗客の姿は見えない。ある二人の男だけを除いては……
「……これから、貴方がしようとしていることは一つ間違えると、『過去を変え、未来を変える』、我々からして犯罪といっても過言ではなき事をなさるのです。よろしいのですか?」
皿の上に丸く盛られたピラフをスプーンですくいながら、天辺の小さな紙の旗を崩さまいと慎重に食べ続ける中年の男が、目の前の相席に座わる、同年代の男にそう問う。そんな、質問に対して向かい席の男はこう返答した。
「過去を変えるという意味ではありません。されど、未来を変えるという意味でもないのです。私がこうして行動していること自体が『運命』なのです。ですから、私が過去を変えるということも最初から決められていたこの世界のシナリオ、すなわち『運命』ということなのですよ?」
そう、やや自分に好都合な、勝手とも思われる台詞を言う男に、ピラフに集中する男はそんな彼の言い分を聞いているのか否か、しかし、彼もまた眼力を強めてピラフを睨みながらこう訊ねた。
「では……その運命とやらが代償を求めてきても、あなたは理不尽なくそれを直に受け入れる覚悟を、お持ちなのですね? それが、例えどれほど残酷な結末であっても、あなたは当然の行為として、また運命として受け入れてくださるのですね?」
その、自己責任を問われるというリスクを受け入れるかどうかを男は改めて同意を求めた。すると、向かい席の男は微笑んで返答する。
「それが、私の運命なのなら受け入れましょう? 運命とは抗うのではなく受け入れるものなのですから……」
「……」
スプーンを握る手が止まり、男はジッと向かい席の男を見つめた。その言葉が本当の思いを意味しているのかを確かめるかのように。しばし、互いは真剣にその表情を窺いあった。こうした沈黙がしばしの間続いた。
それだけで時間は今でも過ぎ去っていき、デンライナーは狭間の空間を走り続ける。車内は静まり返りつつも走るかすかな揺れと線路を踏む音は止むことはない。
「ふふっ……」
しかし、先に反応を示したのはスプーンを持つ男の方であった。彼は二カっと笑った。
「それなら、どうぞ? あなたが、自ら定めた選択肢を決断なさってください? しかし、何度も言うようにすべて『運命』として受け入れる覚悟を持つことを条件として加えますからね……?」
「ええ、もちろん……」
すると、狭間の世界を走るデンライナーは光となってその場から消え、目的地である過去の世界へと到着
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