知らない歴史
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のだ。これが、幕末の外人排斥思想に則り、攘夷戦争と呼ばれるようになった。
攘夷戦争は苛烈を極めた。あちこちで血煙が立ち、死体を見ない日は無かった。それが日常。
一年間に渡る激闘の末、勝利を掴んだのはなんと攘夷派だった。イギリス人たちは強制送還、旧政府は解体となり、攘夷戦争は終わりを告げた。
だが、これで泣きを見たのは旧政府関係者たち。
新政府に対して武力をもって対抗し始めたのだ。
「…で、俺はこのままじゃいけないと思ったんだ。だから10年前、この灯を作った。俺たち能力者のこの力があれば、普通の人間に出来ないことが出来る。中立を貫いて、やがては対話に持っていって、無血合意…なんてのが俺の理想だ。だから今はどっちの依頼も受けてる状態だな。このことは、両組織の幹部クラスしか知らないらしいけどな」
…凄い、そんな経緯があったんだ。
でも、どうして16歳の私が攘夷戦争のほとんどを知らなかったんだろう。戦争なんて一生のトラウマになるようなものなのに。
私は、モニターに映る人々に目を移す。
「やっぱり、無血で解決できたら良いですよね。戦争は、いけないです」
無意識に、そう言っていた。
つまりそれは、灯に加入するという意味の言葉で。
「梦見…ありがとう」
社長さんが、本当に嬉しそうに、無邪気に笑う。この人が、全国民を救おうとしているなんて、誰も思わないだろう。
「あ、あの、それで…」
「おい!お前ら!!」
私の声は、モニター越しに聞こえてきた大音量にかき消された。この声は、鳳凰さん。
「な、なんだ!」
「まさかまた…」
ざわつき出す人々。と、次の瞬間。
赤い炎が、先頭に立っている人の間を縫うようにすり抜けた。すると、その人たちは一人、また一人と倒れていく。
「きゃあああっ!」
「くそっ、またかよ!きたねぇぞ政府!」
現場は一瞬にして大混乱に陥った。やはり、先頭の彼らが指導者だったのだろう。
そうこうしている間にも、火はそこらじゅうを飛び回り…ついに、立っている者は一人も居なくなった。
「な…なにが起きたんですか…?」
あまりのことに震えながら誰にともなく尋ねると、紫翔さんがそっと抱き締めてくれた。
「大丈夫や、気絶してはるだけやから」
それは、大丈夫の部類に入るのだろうか。確かに、誰も怪我をしている様子はない。
すると、誰かがひょこっとモニターに顔を出した。
…鳳凰さんだ。
「お疲れ様だよ、鳳凰」
「おう!人間は無傷でって言われてるからな、大変だぜ」
「…悪妖の方が、暴れて大変ではないか」
続いて、黒羽さんが。成る程、つまり今のはこの二人の能力なんだ。
「す、鳳凰さん。鳳凰さんは、火なんですか?」
「んー、正確には"鬼火"だな。こう見えて陰なんだぜ」
確かに、性格はどう考えても陽だ。
「どうやっ
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