ペルソナ3
1835話
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もし、この場にいるのが俺だけであれば、この鉄格子……のように見える空間を破壊する事を試してもいいだろう。
だが、現在の俺達はいつものようにゆかりと荒垣以外に、桐条と真田という2人が一緒にいる。
そんな状況で無茶を出来るかと言われれば……ちょっと無理だろう。
この鉄格子の空間を俺が破壊した事で、どのような影響が出るのかも分からない。
それに、恐らくだがこの鉄格子は原作が始まった時に、何らかの意味を持つ筈だ。
無難に考えれば、ボスか何か……それも俺達が倒してきたような小ボスではなく、中ボスと言うべきか? そんな中ボスを倒したら、先に進めるようになるんだろう。
そんな状況で、もし俺がこれを壊して先に進もうものなら、何が起きるのか分からない。
この鉄格子を解放するのが、何らかの大きな意味を持つという可能性もあるのだ。
……原作知識がないというのは、やっぱり痛いな。
W世界では、その辺りの心配をしなくてもよかったので、結構好き勝手出来たのだが。
もっとも、好き勝手に原作を掻き乱したせいで、劇場版で姿を現すマリーメイア軍の出てくる時期がかなり早まってしまったのだが。
幸いにもW世界ではそんな事になっても、全く問題はなかった。
いや、寧ろ早期にマリーメイア軍を鎮圧した事により、本来出る筈だった被害は小さくなったと言ってもいいだろう。
だが、それはあくまでも原作知識があるからこそ出来た事だ。
このペルソナ世界の原作知識がない以上、迂闊な真似は出来ない。
そう考えれば、やはりこれを俺の力で強引にどうにかするというのは止めた方がいいだろう。
勿論これが、もっと深刻な事態……それこそ、原作では本来ゆかりが死ぬとかなら、原作を無視してでも俺は手を出すだろう。
だが、そこまで切羽詰まっている状況ではない以上、この鉄格子をどうにかしようとは思わない。
「ん? あれは……一体何だ?」
ふと、桐条が何か呟く声で我に返る。
「どうした?」
「いや……あそこに何か……」
そう言いながら、桐条が向かった先には……宝箱が地面に置かれていた。
その宝箱は、他の階層と同じように無造作に置かれていたと表現するのが正しいだろう。
だが、何故宝箱がこんな場所に?
いや、勿論タルタロスの中に外の物が置かれているというのは、今までの経験から考えて不思議な事ではない。
実際、普通に使える現金を始めとして、様々な物が宝箱の中に入っているのだから。
そう考えれば、ここに宝箱が置かれていてもおかしくはない。
だが……ここが普通の階ならともかく、鉄格子に見える何かでこれ以上の侵入を防ぐような形になっている場所に、この宝箱は置かれているのだ。
これがおかしくなくて、何をおかしいと言えばいいのやら。
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