第五章
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「二人が幸せならな」
「奥さんが二十歳年上でも」
「それでもな」
「二人が幸せだから」
「それに二人共別に不倫でも何でもない」
十一年以上もの間だ、神に誓って清らかな間柄だったからだというのだ。二人共このことにも真剣だったのだ。
「それならな」
「そうね、私もね」
オパンも幸せそのものの二人の顔を見て言った。
「これでいいわ」
「そうだな、二人が幸せならな」
「ニキータさんのご両親もね」
「ああ、そう思っているみたいだな」
最初は複雑な顔だった、だが今は。
自分達の娘とその夫の姿を見て笑顔になっていた、その彼等も見て余計にだった。
二人もいいと思ってだ、それでだった。
「もういいな」
「そうね、素直に祝福してあげましょう」
「それが親の務めだしな」
「子供の幸せを祝うのも」
二人でこう話してだ、そしてだ。
二人はニキータの両親と共に新郎新婦を祝った、こうして二人の生活ははじまった。その生活は幸せそのもので。
還暦になった時にだ、フェリペは八十近いが彼にとっては今も美しい妻が作ってくれたお菓子を食べつつ孫達に自分達の馴れ初めのことを話してだ、コーヒーを一口飲んでから言った。
「わし等程幸せな人間はいない」
「ううん、何か皆に聞いたら」
「二十歳歳の差の夫婦なんて少ないよ」
「それもお祖母ちゃんの方が上って」
「そうそうないけれど」
「ははは、それはそうだ」
フェリペ自身もそのことは笑って認めた。
「自分でもわかっているさ、しかしな」
「しかし?」
「しかしっていうと?」
「それでも幸せなんだ」
このことは変わらないというのだ。
「あの時も今もな」
「そうなんだ」
「お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも幸せなんだ」
「二十歳も離れていても」
「それでもなんだ」
「そうだ、幸せでな」
そしてというのだ。
「こんなに幸せな人間は他にいないぞ」
「そうまで言うんだ」
「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが」
「特にわしはな」
フェリペは自分がとりわけと言うのだった。
「初恋を適えられてそしてだ」
「ずっと一緒だから」
「それでなんだ」
「そうだ、こんな幸せなことがあるか」
それこそというのだ。
「他の人がどう言ってるか知ってるがな」
「お祖父ちゃん自身はだね」
「幸せなんだね」
「ああ、本当にな」
実際にというのだ、こう話してだった。
フェリペは妻が作ってくれたそのお菓子を孫達にも差し出して食べさせた、そして彼等が美味しいと言って喜ぶ姿を見て目を細めさせた。
適える初恋 完
2017・5・23
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