第七章
[8]前話
「それでな、あと犬や猫はじゃ」
「存分にですな」
「探せばよい」
吉宗は明るく笑って言った。
「それはな」
「左様ですか」
「うむ、ではな」
「はい、忍達は」
「道場も犬や猫を探すのも好きにさせよ」
「不義を調べることも」
「そのどれもじゃ」
まさに全てをというのだ。
「させよ、それが暇潰しになったり銭を稼ぐことになればな」
「より、ですな」
「よいわ、好きにさせるのじゃ」
こう加納に言ってだ、吉宗は実際に江戸の忍達にそうしたことをすることを好きにさせた。こうして絵江戸では忍の術の道場が流行り不義の調べや犬猫探しも忍の者達が広く行う様になった。それを見てだ。
徳田は加納と共に江戸の町を身分を隠して見回りつつだ、こんなことを言った。
「いや、忍の者達がそうしたことをするとは」
「泰平の世ではじゃな」
「面白いですな」
笑って言うのだった。
「実に」
「確かにな、泰平なら泰平でな」
「忍の者達もすることがある」
「そういうことじゃな」
「全くじゃ、それでな」
ここでだ、加納は。
丁度自分達が歩いている道の横で寝ていた三毛猫を小男が紙に描かれた猫の絵と見比べて頷いて捕まえるのを見てだ、徳田に笑って言った。
「こうして人の役に立つ」
「道場もですな」
「よいことじゃな」
「やはり忍術も泰平でもですな」
「役に立つ、そういうことですな」
「泰平は忍の者にとってもよい」
「そういうことじゃ、やはり泰平は何よりもよい」
加納は目を笑わせて言った。
「このまま泰平の世を守っていかねばな」
「ですな、我等は」
「誰にとってもよい、民にとっても忍の者達にとっても」
「そして我等にとっても」
「そういうことじゃ、では腹が減ったからな」
ここでだ、加納はこうも言った。
「何か食するか」
「それでは蕎麦でも」
「それにするか」
「これも泰平ならではですな」
「そうじゃな、食することが出来るな」
「落ち着いて美味く」
「そうじゃな」
二人で話してだ、そのうえでだった。
加納は徳田と共に近くの蕎麦屋に入って蕎麦を食った、その蕎麦からも泰平の落ち着いた味があった。
泰平忍者 完
2017・2・18
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