第六章
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「それがし実はたまに遊郭に行きますが」
「吉原にか」
「はい、それを女房に気付かれて」
「忍の者を雇われてじゃな」
「見られたら厄介ですな」
「それはのう、しかしな」
加納は徳田に真面目な顔で言った。
「それはな」
「最初からですな」
「行かねばよい」
真面目な加納はこう徳田に言った。
「遊郭にな」
「それが一番ですか」
「ああした場所はそもそもな」
「注意した方がいいですな」
「そうじゃ、浮気もまずいが」
「花柳の病ですな」
「瘡毒なり何なりとな」
こうした病が恐ろしいとだ、加納は徳田に話した。
「なると危ういぞ」
「瘡毒で死ぬ者も多いですな」
「うむ、昔からな」
「だからじゃ」
「そうした場所にはですか」
「行かぬ方がいい」
こう言ったのだった。
「最初からな」
「そうなりますか」
「うむ、だからな」
「そうしたことはせぬこと」
「そうじゃ、そうせよ」
その真面目さからだ、加納は徳田に話した。
「わかったな」
「そうしますか」
「さもないと浮気がばれるか瘡毒になるかだぞ」
「どちらにしても厄介ですな」
「だから最初からせぬことじゃ」
加納は徳田に言った、そしてだった。
彼は自分の屋敷に帰り次の日吉宗の前に参上してことの次第を話した。すると吉宗は何度か頷いてからこう言った。
「わかった、ではな」
「このことはですな」
「よい」
これが吉宗の返事だった。
「道場を開いてもな」
「不義を調べたりすることもですな」
「まあ不義密通やおなごなら打ち首獄門じゃが」
「そこまでは」
「まずない」
実際にそうしたことをしてもというのだ。
「まあそこは裁きの加減もあるしお互いに話してな」
「済ませることで」
「夫婦喧嘩で済めばよい」
打ち首獄門まで至らずというのだ。
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