第四章
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草履を脱ぎ道場に入りだ、加納が言った。
「頼もう」
「おや、師匠お武家様ですよ」
「お武家様が来られました」
「そうであるな」
白髪の老人は黒装束の者達の言葉に応えた。
「弟子入りであろうか」
「それとも見学か」
「どれでしょうか」
「少し話を聞こう、毛無巻よ」
老人は自分の傍にいた若い男に顔を向けて言った。
「少しな」
「はい、お師匠様の代わりに」
「弟子達を教えてやってくれ」
「わかりました」
毛無巻と言われた男も頷いてだ、彼の代わりに教えはじめた。老人はそれを見てから加納達のところに行き二人を出迎えた。
「お武家様、また今日はどの様な」
「うむ、拙者は神田に済む加藤という御家人じゃが」
「お仕えしている飛田という」
加納も徳田も身分を隠して偽の名を名乗った。
「たまたま前を通りがかってな」
「それでどんなものかと思い中に入った次第」
「忍術の道場とあるが」
「実際に忍術を教えておるのか」
「左様です」
その通りだとだ、老人は二人に答えた。
「ここは忍術の道場です」
「やはりそうか」
「それがし名を秋山夢幻斎といいます」
老人も二人に名乗った。
「甲賀の者でして」
「だから甲賀流か」
「はい、左様です」
「詳しい話を聞きたいのだが」
「それでしたら」
秋山は加納にすぐに応えた。
「茶を飲みながら」
「そうしてじゃな」
「話をしませんか」
「うむ、それではな」
「では今より」
秋山はあらたまってだ、二人に話した。その話はというと。
「やはり暇でして」
「今はか」
「はい、禄は貰っていて暮らすことは出来ますが」
それでもというのだ。
「仕事は時々で」
「それでは」
「その暇をどうしようかと思いまして」
「道場を開いたか」」
「そして町民達に教えております」
その忍術をというのだ。
「そうしております」
「暇潰しか」
「速く駆けたり高く跳んだり泳いだり」
「そうしたことをか」
「教えております」
忍術のそれをというのだ。
「そして道場であった様に手裏剣を投げたり」
「そうしたこともじゃな」
「教えております」
「手裏剣術の道場もあるがな」
「こちらでも教えております」
「手裏剣は忍の者には欠かせぬからな」
「あと鎖鎌も、そして忍者の道具の使い方もです」
そちらもというのだ。
「教えております」
「忍術全体をか」
「はい」
まさにというのだ。
「教えております」
「では免許皆伝も」
「今は誰もおりませぬが」
弟子達の中にというのだ。
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