第二章
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「余も見てみたいな」
「その道場を」
「そう思ったが」
「いえ、上様がお忍びでも江戸城から出られることは」
「出来jぬな」
「それはご遠慮下さい、ましてや上様が出られたなら」
江戸城からだとだ、加納は吉宗のその大柄な身体を見つつこうも言った。
「どうしても目立ってしまいます」
「余の図体がでかいからか」
「左様です、どうにも」
「ははは、困ったのう」
自分の大きさのことを言われるとだ、吉宗も苦笑いになるしかなかった。
「それでは諦めるしかないな」
「ご自重を」
「ではそうさせてもらう」
実際に自重するとだ、吉宗も約束した。
「その様にな」
「それでは」
「しかしだ」
吉宗は約束したうえで加納にあらためて言った。
「その忍の道場のことは知りたい」
「そう思われますか」
「より聞きたいが」
「ではそれがしが」
加納はここで自ら申し出た。
「出向いて行きますが」
「身分を隠してか」
「そのうえで」
「わかった、ではそなたに頼もう」
吉宗は加納の言葉を受けて彼に言葉を返した。
「このことはな」
「それでは」
「見て参れ、忍の道場を」
「そうしてきます」
「そして余に詳しく話してくれ」
こう加納に言うのだった。
「是非な」
「それでは」
「泰平の世の忍の者達がどうしておるか」
吉宗は興味深い感じの顔で述べた。
「知りたいわ」
「では見て参ります」
今度は加納が約束した、そしてだった。
彼は実際に身分を隠し若い彼の家臣である徳田新右衛門を連れてだ、江戸の日本橋の近くにある忍の道場に向かった。その中でだ。
彼は日本橋の町民や店を見てだ、まずはこう言った。
「よいな」
「はい、民達は今日もですな」
「賑やかに楽しく暮らしておるな」
「何よりですな」
「上様もお喜びじゃ」
「やはり民達が賑やかでないと」
「どうにもな」
幕府としてもというのだ。
「よくない」
「民達に泰平の世を楽しませてこその幕府ですからな」
「そうじゃ」
加納は徳田にはっきりとした声で答えた、枯れた感じだが武士らしく姿勢はいい。
「やはりな」
「それを忘れれば」
「幕府は幕府でなくなる」
「この泰平を何時までも続けて天下万民を楽しませる」
「そうあってこそじゃ」
まさにとだ、こう徳田に話してだった。加納は彼を連れてその忍術の道場に向かった。そしてその道場の前に来ると。
道場は剣術や柔術、その他の武芸のそれと同じ造りで門には看板もある。そこには甲賀流忍術道場と堂々と書かれていた。
その毛筆の見事な字を見てだ、加納はまずはこう言った。
「忍術とは忍ぶものじゃが」
「それでもですね」
「堂々としておるのう」
「逃げも隠れもせぬ」
「そんな感じじゃ
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