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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
幕間三 伯爵家の政界談義
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城は現当主がまだ現役だからな。
表立って動く守原とは違い、裏にまわって行動するのを好む。先代が政争で敗れてからは護州に寄る事で政治的な動きをおこなっている。逆に現当主の宮野木清麿は全くと言っていいほど政治的な争いを避けている」

「清麿様は駒州公が手配して将官となったのでしたね」
 つまり駒城と敵対する事で不利益が出るような構造になっているという事だ。

「うむ、だがそれが許せないのだろうな。もともと宮野木は領土よりも皇都と宮中への影響力で諸将時代を生き延びたようなものだ。背州も諸将時代は護州が支配していた領土を戦後処理で獲得したようなものだ。軍の支配権という点ではどうしても四将家から一歩落ちる」

「我々も似たようなものだと思うのですが何故駄目だったんですかね」

「こ、皇都の交易路を掌握できる弓勢半島の統一に忙しかったから‥‥‥」
 弓月家の本拠地がある故州――弓勢半島は皇都の航路として弓瀬湾の出入りを掌握できる。本来なら故府がおかれていたように古都として皇家の天領であるのだが‥‥‥実権を握った商人上がりの海賊やら似たような神官上りの領主やらと三国志をやっていたのであるが――
「実際、統一できるわけがないですからね」

「皇都の商人連中やら駒城やら守原やらがあっちこっち掌返して勢力均衡の為に支援していたからなぁ‥‥‥」

「まぁそれでも元が故府職大進なのに故府職大夫にまで格を上げてますからね、上が何故か滅亡して」
「なんでだろうネ」
 不思議な事もあったものである。


「御先祖方も殺る事殺ってるんですねぇ」「爵位持ちというものは大半がそういうものだ」

 自分達の先祖に思いを馳せる有意義なひと時を終え、伯爵家の講習はまだ続く。

「さて次は西原派、西領最北端の州を支配する西原家の派閥だ。地理的な関係上、交易による海運が発達しているな。五将家の中では地理的な要因もあり調整役に回ることが多々あった。元々、海運業を中心とした物流で西領の経済を支配する形で公爵家としての支配力を確保している、廻船問屋との結びつきが強く、水軍や財界を基盤とする衆民院議員との伝手も相応にあり、内地の政争には基本的に関心が薄い、ある意味では駒城以上に独立独歩だ」

「う〜ん?その割には守原と仲が良かった印象がありますが」
 なにかと平和な時代の新聞では提携やら共同開発の祝賀会などで殿様同士がにこやかに歓談していた印象がある。
「そうだな、護州派との結びつきが強いのは事実だ。もともと北領開発を筆頭に護州が手を回していた国土開発で最も恩恵を受けていたのは西原だからな。天領の商人らは別とすれば」

「なるほど、資材の運搬や皇都から離れた地域の共同開発というと西領にも旨味があるわけですね」

「一方で駒州派の一部とも連携をして
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