第六章
[8]前話
「そもそも」
「そうだな」
「とんでもない雑誌ですよね」
「普通の人間が真面目に読む雑誌じゃないな」
「そうですよね」
「そうだ」
「つまりお仲間の雑誌ですよね」
安田のというのだ。
「身内の雑誌で言いますか」
「そうしているんだ」
「あの、しかもその発言は」
言っている内容はというと。
「国家権力がどうとかの」
「恨み節ばかりだな」
「やっぱり運動で裁判やってたんですね」
「弁護士の活動をな」
「そうした奴だったんですね」
「最初からな」
「つくづく酷い奴ですね」
苦々しい顔でだ、山田はまた言った。
「こいつは」
「本当にそう思うな」
「この雑誌も死刑廃止論ですしね」
「反体制のな」
「人を殺しまくってクーデターまで考えていた連中の死刑反対で反体制ならいいですか」
「そうした意見を言っている弁護士でな」
そしてとだ、河原崎は話した。
「雑誌だ」
「つくづくですね」
「酷いな」
「はい、まあ裁判は普通に進む様になりました」
「だったらな」
「いいとしますか」
「我々は裁判をしているんだ」
検事としての立場からだ。
「裁判をしているのならな」
「幾ら弁護士が被告人の為に仕事をしてもですね」
「やっていいことと悪いことがあるんだ」
「それで安田がしていることは」
「わかるな」
「はい」
山田は河原崎に苦い顔で答えた。
「そういうことですね」
「死刑廃止でも反体制でもだ」
「税金もかかっていますしね」
所謂国民の血税がだ、裁判費用ましてや国選言語人である。税金がかかっているのは当然のことだ。
「それで税金無駄にしてまで」
「ああしたことはするものじゃない」
「しかもお仲間のところで愚痴ですか」
「本当にどういう奴かわかるな」
「見下げ果てた奴ですね」
「こういう奴こそをこう言うんだ」
河原崎はその雑誌での安田のコメントを読みつつ軽蔑しきった声で言った。
「人非人ってな」
「本当にそうですね」
「こいつはまた同じことをするぞ」
今回のことで何一つ反省せずにというのだ。
「またな」
「絶対に」
「今度は何をやらかすか」
「見ものですね、ある意味」
「人間ならイデオロギーよりも人の気持ちを考えろ」
他者への配慮、そちらを優先しろというのだ。
「殺された人達の遺族の人達の心をな」
「全くですね」
山田もその通りだと頷いた、そして二人の予想通りにだった。
安田は十数年後今度は未成年の殺人事件の弁護士を買って出てそのうえで今度は醜い弁護を行った、この時も問題になった。河原崎も山田もその安田を冥府魔道に堕ちた輩として見るだけだった。
人非人 完
2017・4・16
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