第二章
[8]前話
「桑田ちゃんの言うことは嘘だぞ」
「えっ、じゃあ私ハリセンボン飲まさせられるんじゃなくて」
「閻魔様に舌を抜かれるんだぞ」
こう言うのでした、そう言われてです。
宏美はびっくりしてです、お家に帰ってお母さんにこのお話をしました。
「閻魔様に舌を抜かれるって言われたの」
「嘘を吐いたらね」
「ハリセンボンを飲まさせられるんじゃなくて」
「そう言われたのね」
「同じクラスの大助君に、だからね」
それでというのです。
「私閻魔様に舌を抜かれるの?」
「それはね」
「それは?」
「同じよ」
「同じって」
「嘘を吐いたらその人によってお仕置きが違うのよ」
お母さんは優しく笑って宏美に言うのでした。
「閻魔様に舌を抜かれたりね」
「ハリセンボンを飲まさせられたリ」
「色々なの」
「そうなの」
「だから宏美ちゃんは嘘を言っていないわ」
このことは安心していいというのです。
「だから心配しなくていいわ」
「そうなの」
「それにハリセンボンというけれど」
お母さんはさらにお話しました。
「針千本の場合もあるの」
「本当に針を千本なの」
「その場合もあるのよ」
「あのお魚に限らないで」
「そうよ、だから気をつけてね」
このこともというのです。
「ハリセンボンと針千本があるの」
「そうなの」
「嘘を吐いた時もね」
その時に飲まさせられるものもというのです。
「また違うから」
「何か難しいね」
「難しく考えることはないの」
お母さんは優しく笑って考えだした宏美に言いました。
「宏美ちゃんも大きくなったらわかるから」
「お母さんみたいな歳になったら?」
「その時にはね」
「そうなの、じゃあ」
「その時に宏美ちゃんの子供に教えてあげてね」
「うん」
宏美はお母さんに頷いて答えました。
「私そうするわね」
「そうしてね」
「それじゃあね」
宏美も頷きました、そして実際にです。
宏美が結婚して子供が出来てです、その子に同じことを教えました。お母さんに言われたことをそのまま。
針千本 完
2017・5・21
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