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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
外伝 いけいけむてきのオーネスト
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でウチの膝の上で寝んなし!こ、今回だけだかんな!ウチはエルフで、これは特別なんだかんな!?」

 本来、潔癖のエルフが他人の男に膝枕するなど一部の男からすれば一生に一度の夢レベルの出来事である。ベル辺りなら100パーセント羨ましがる。ボーイッシュで普段が不潔でファッションセンスがないとはいえ、腐ってもエルフなミリオンの膝枕は一般男性からすれば金を払ってやってもらえるならいくらでも払うものだ。
 そんな夢を目の前に別の夢を見る彼は、なかなかに器用かつ恵まれた男なのかもしれない。
 ……同性に好かれないタイプだが。



 = =



 『豊穣の女主人』にオーネストが入る時、いつも独特の張り詰めた空気が漂う。
 オーネストの全身にこびり付く、他者を拒絶、或いは無視するような高慢な態度。そして店主ミアとの険悪としか言いようのない関係が生み出す緊張感。それはいつも唐突に訪れ、遅れて上がるアズライールの呑気な声で中和される。それが一種の様式美になっていた。

 しかし、黒竜討伐の騒ぎの煽りでいつも以上に客入りが多い事を加味しても、リューが店内にオーネストが来ている事に気付いたのは余りにも遅かった。カウンターに座ってから気付くなど、これまで考えられなかった事だ。
 それほどに――それほどに、その日のオーネストは静かで、どこか穏やかなまでも風を纏っている気がした。なのでリューは思わず素っ頓狂な事を聞いてしまった。

「えっと……どなたですか?」
「とうとう常連客の顔すら……若年性健忘とは恐ろしいものだな」
「その物言い!いつものくそガキですね!?」
「見て分からんか。何の為に眼球が二つも付いている、この戯け」

 珍しく言い返せないド正論に言葉が詰まる。これは言い訳のしようがない大失態である。確かに見ればオーネストだ。いっそ他の誰だよという話だ。男装のアイズと言われれば可能性は僅かにあるが。だがそれは視覚情報に頼った話であり、魂に刺さるレベルの激しい気配を放つ彼の気質を知る者ならリューを咎める事は出来ないだろう。

「な、なんですか。普段と違ってやけに穏やかな気配を放って。別人と間違えても可笑しくありませんよ、くそガキ」
「まぁ、色々とあった。そうか、そんなに変わってるか……」
「……今日はやけに素直ですね。普段なら全力でみっともなく揚げ足を取りに来るくせに。悪いものでも食べましたか?」
「いや、いい加減に意地を張り続けるのも疲れただけだ。少し自分を見直す事にした。だからそれを伝えに来ただけだ、リュー」

 リュー。今、リューと言ったのだろうか。
 この青年が何を言っているのかリューはいまいち理解しきれていなかった。オーネストがリューを呼ぶときの台詞は「くそメイド」或いは「お前」である。それ以外など経験則の上
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