第三章
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「そうしたものでパンをお召し上がり下さい」
「ではな」
「あの、王妃様」
貴族の一人がカトリーヌにおずおずとした態度で問うてきた。
「宜しいでしょうか」
「何でしょうか」
「料理に黒いものが入っていますが」
見たこともない豪勢な料理を指し示しての言葉だった。
「これは」
「それはトリュフです」
「トリュフとは」
「山で採れる稀少なものでして」
「山で、ですか」
「そうです、美味しいです」
こう貴族に話した。
「食べてみて下さい」
「左様ですか」
「そして食後に果物以外にもです」
カトリーヌはそちらの話もした。
「ワインに果物の汁を入れて割ったものや氷菓も出します」
「氷菓?」
「それは何ですか?」
氷菓と聞いてだ、王も貴族達もだ。
誰もが怪訝な顔になってだ、そのうえでカトリーヌに問い返した。
「聞いたこともないですが」
「それは」
「はい、砂糖とミルクと卵を合わせて作った菓子を冷やして固めたものです」
カトリーヌは氷菓のことも話した。
「これが非常に美味しいので」
「だからか」
「その氷菓もですか」
「食べる」
「食後に」
「そうです、そうして下さい」
是非にという返事だった。
「そちらも
「わかった」
王が一同を代表して頷いた、そのうえで食べようとするが。
カトリーヌはフォークも出して彼等にそちらも紹介した。
「手で食べるのではなくこれに刺してお口の中に入れて食べて下さい」
「何と、それを使ってか」
「そうです」
カトリーヌはこのことでもだ、王に答えた。
「そうしてです」
「そうして食べるのか」
「手で食べると指が汚れますね」
「それはそうだが」
「そうした食べ方はもうフィレンツェではしません」
進んでいるこの街ではというのだ、カトリーヌはこのことについても強調した。
「ですから」
「フォークを使ってか」
「切った料理をお食べ下さい」
「ではな」
王はまた一同を代表して応えた、こうしてだった。
フランスの宮廷にいる者達はカトリーヌが紹介した食べ方でカトリーヌが出させた料理を食べた、するとだった。
食べたこともない味にだ、彼等は驚嘆した。
「何だこの味は」
「野菜も肉も違う」
「魚も」
「何という味だ」
「香辛料の使い方が違う」
「こうした香草の使い方があったのか」
「何と美味しい」
手慣れない動作でフォークを使って食べつつ言うのだった。
「このトリュフも何という味だ」
「この様な美味しいものがあったのか」
「しかも果汁で割ったワインの実に美味いことだ」
「氷菓の味は何とも言えない」
「この様なものがあったのか」
「これ程美味しいものが」
「これがフィレンツェの料理です」
カトリーヌ
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