第一章
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食道楽王妃
カトリーヌ=ド=メディチは名前の通りメディチ家出身である。フィレンツェに君臨するこの家は飽食の街と呼ばれたこの街の中でもとりわけ美食の家だった。
一族の持病は痛風であった、この病気が美食によるところが大きいのは知られている、美食でなければビールが原因だ。
それだけにカトリーヌも美食家だった、その彼女がフランス王アンリ二世の妃としてフランスに入ったのだが。
カトリーヌはフランスの宮廷料理を見てまずは絶句した、そしてその後で夫であるアンリに対して問い詰めた。
「王よ、これは一体何でしょうか」
「何かとは?」
「ですから宮廷のこの料理はです」
巨大な肉を無造作に焼いただけのものやくたくたになるまで煮たシチュー、果物があったり質の悪いワインがあったりだ。パンも悪い。カトリーヌはそうした宮廷の料理を見て王に問うたのだ。
「何なのですか」
「?何か不都合があるか」
「あるどころではありません」
カトリーヌは口を尖らせて王に答えた。
「どれもこれも食べられるものではありません」
「馬鹿な、この国で一番の馳走ばかりだぞ」
王は驚きを隠せない顔でカトリーヌに返した。
「どれもこれも」
「これ等がご馳走だというのですか」
「そうだが」
「こうしたものはフィレンツェではまともな者ならば誰も口にしません」
カトリーヌは不愉快さを隠さず王に答えた。
「それこそ」
「ではそなたはどうしたものを食べているのだ」
「それはこれからお見せします」
「これからか」
「はい、厨房に私がフィレンツェから連れて来た者達を入れます」
こう王に答えた。
「そうしますので」
「ふむ、ではだ」
王もカトリーヌのその話を聞いて考える顔になり応えた。
「見せてもらおうか」
「はい、是非」
カトリーヌは王に返した、そしてこの日は宮廷に出されたものには見向きもせずフィレンツェから呼んだ者達に作らせた料理を食べた、そのうえでだ。
その料理を食べつつだ、彼女は周りの者達に言った。
「よいですか」
「はい、私達がですね」
「フィレンツェの料理を見せるのです」
「フランスの宮廷において」
「そうです、食材もです」
料理以外の話もだ、カトリーヌはした。
「取り寄せなさい、いいですね」
「我々がいいと思うものをですね」
「自在に」
「調味料もです」
食材だけでなくというのだ。
「香辛料も同じです」
「胡椒等もですね」
「遠慮なく使い」
「そしてですね」
「そのうえで、ですね」
「貴方達の腕を見せるのです」
カトリーヌは二又のフォークを使い料理を口に中に入れていた、そうしつつ周りの者達にこうも言ったのだった。
「そしてこれもです」
「フォーク
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