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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第四十話 最果ての果て
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た刀を腰だめに構え、斬撃の後ろを走る。
疾走の中で刀身に魔力を纏わせ、黒夜の刀へ変化させる。
十分な速度と十分な魔力供給ができた所で、俺は倒れるか倒れないかギリギリの前傾姿勢から真っ直ぐ刀を突き出した。
眩い光を持ちながら放たれた刃は、流星のような尾を描きながら半月の斬撃の中心を突き刺す。
しかしそれで斬撃は破壊されず、むしろその一撃を受け入れると言わんばかりに混ざり合い、刀の左右に斬撃の翼が生まれ、羽ばたく。
――――これは細剣を用いて光速突きを繰り出す逢沢 雪鳴の技術と、俺の持つ剣術で最速の抜刀術を組み合わせることで生まれた新たな天流の剣技。
光速で放たれる牙突と、神速で放たれた雷切から生まれた斬撃を合わせて放つ融合剣技。
「
牙龍天翔
(
がりゅうてんしょう
)
!」
牙を持った龍が翼を羽ばたかせ、相手を喰らうが如く放つ第陸の天流。
「喰らえ、暴食の黒龍!」
対してアイツはその剣の柄を両手で握り締め、前方に突きのように押し出すと、切っ先から前方に魔力が発射された。
それはまるで漆黒の龍。
大きな口を開き、迫る全てを喰らい尽くさんとする邪龍。
「インフェルノ・グラトニーッ!」
漆黒の魔力から生み出された龍と、剣技の組み合わせで生まれた龍は衝突する。
双つの龍は互いを喰らわんとぶつかり合い、何度もぶつかり合う。
「うぉおおおおおおっ!!」
「がぁああああああっ!!」
二人の咆哮が魔力を高め、より激しい衝撃を生み出す。
ムスプルへイムと呼ばれる黒炎の空間が揺れるほど、俺たちは強大な魔力のぶつけ合いをしていた。
均衡する力と技。
恐らく威力は同等なのだろう。
だけど、俺は自信を持っていた。
この技は、アイツの魔法なんかよりずっと優れていると!
「なぁっ!?」
「終わりだっ!!」
均衡は崩れ、俺は今一度力強く右足で踏み込み、右腕を引き絞り、前に突き出した。
こうして夜黒の龍は漆黒の龍を喰らいながら黒炎の少年に迫り、喰らった。
イル・スフォルトゥーナは確かに天才だ。
恐らくこれから先、今の何倍も強くなることができるだろう。
まだ果て無き頂きを登り、いつか誰も届かない先へ至れるだろう。
だけど、アイツには俺とは違う決定的なものがある。
アイツの剣は、何も背負っていないのだ。
誰かの想いも、自分の理想も、何もない。
力だけで何もかも一人で突破できるほど、この世界は甘くない。
俺だって今までにたくさんの壁にぶちあたった。
きっと、これからもたくさんの壁を目の前にするだろう。
だけど恐れはない。
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