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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第四十話 最果ての果て
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不敵な笑みをしたままのアイツがいて、自らの剣をその場で振るう。

「――――グレイプニル」

 魔法名をアイツが発したと同時に、黒炎の世界から無数の鎖が俺めがけて迫ってきた。

 四方八方、回避の場所は一瞬にして奪われる。

 今更だが、この世界はアイツが作り出したものだ。

 それを利用した魔法があるのは当然だ。

 地の利を活かすとは、まさにこのことだろう。

 そして全てを片手の刀一本で対応するのは厳しい。

 魔力弾を打ち出しても軌道を逸らすことしかできず、防戦一方だろう。

 この戦いでは攻撃が最大の防御だ。
 
 刀だけでは防御しきれない。
 
 ならば、別の可能性を引き寄せる。

 俺は刀を左腰の鞘に収め、右手をガラ空きにさせる。

 そしてその場で握りこぶしを作ると、指と指の隙間にCDよりも薄いディスク状の魔法陣が現れる。

 それを振り払う動作で投げると、高速回転しながら俺の周囲を周る。

 俺という存在を中心に円軌道を描いて公転する惑星のように。

 それを右手で何枚も作り、何枚も投げて公転させる。

 魔法陣が生み出した公転に迫った黒炎の鎖は、触れたその瞬間に細切れにされて消滅した。

 完成したのは、俺に迫る全ての攻撃を切り裂いていく刃の竜巻。
 
 魔法を発動する上で必須の、そして魔法を発動させるほどの絶対的存在故の強固さを持つ魔法陣を利用した投擲武器。

 それを防御のために周囲に展開させ、公転させる。

 これを魔力弾で行っても、迫る攻撃をぶつけて破壊するかできないかのどちらかだ。

 しかし魔法陣を使えば薄い刃となり、迫る攻撃を『斬り裂く』ことができる。

 それは消費魔力量に影響されず、放つ際の回転数しか問われない。

 俺が生み出した魔法陣の刃を破壊しようと、俺の周囲を埋め尽くすほどの膨大な量の鎖がこちらに迫る。

 視界が全てそれに埋め尽くされ、量を見ても防ぎきれないと直ぐに察した。

 だけど、慌てる必要はない。

 なぜならこの技は、まだ未完成だから。

「天流・第伍翔」

 俺は鞘に収まった刀を右手で握り締め、腰を低く落として抜刀術の構えを取る。

 上半身を後ろに捻り、抜刀と同時に全身を一気に回転させる。

 振り抜いた光速の斬線を、俺の周囲を駆ける魔法陣と接触させ、弾き飛ばす。

 それを回転一周分で全ての魔法陣に当てて飛ばすと、魔法陣は黒の魔力光を刃に纏わせてより鋭いものへと進化し、光速の抜刀術との衝突で回転数が増し、小さな黒い竜巻を生み出した。

 無数に生まれた黒き竜巻は、俺の周囲を公転しながら全ての鎖を粉々に切り裂く。

 ――――これは、円月輪を用いて戦う逢沢 柚那の
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