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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第四十話 最果ての果て
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そう思いながら、俺は別れの一歩を踏み出す。





――――生きる理由が分からないなら、私のために生きて。 私じゃ足りないなら、お姉ちゃんのために、なのはさんのために、他の仲間のために……。 お願いだから、生きてよ……いなくならないでよぉ……お兄ちゃん!!






(――――そうだ、違うじゃないか!)

 ふと過ぎったのは、柚那が俺にぶつけた願いだった。

 そうだ。

 俺はあの時、誓ったじゃないか。

 生きるって。

 みんなを幸せにするって。

 その幸せの輪の中に入りたいって。

 その約束、今こそ守るべきじゃないか。

(諦めるな! できることが、まだあるはずだ!)

 自らの言葉で自らを奮い立たせる。

 ここで死ぬことは、誰も許してくれない。

 それがどれだけ誇れる死であっても、誰も受け入れてはくれない。

 むしろ誰もが悲しんでしまう。

 俺は、みんなに笑っていて欲しいんだ。

 そのために戦うんだ。

 そのために勝つんだ。

 ならば勝て。

 勝って、あの子達を守り続けろ!

 自分がどれだけ凡人でも、愚かな存在でも、そんなことは関係ない。

 さぁ、魂を研ぎ澄ませ!

 嗅覚や聴覚は捨てろ。

 視覚は色彩を理解する必要すらない。

 リンカーコアに存在する全ての魔力を振り絞って両脚と右腕に捧げろ。

 足りないものはかき集めろ。

 あるもの全部振り絞れ。

 駆け抜けろ!

 斬り裂け!

 死ぬための一歩ではない。

 生きるための一歩を踏み出せ。

 そして放て。

 極限の一撃を!


「天流奥義・龍刃修羅(りゅうじんしゅら)っ!!」 


 神速の一歩を踏み込み放った神速の抜刀術。

 雷切すらスローモーションに見えるほどの、人はもはやたどり着けない、修羅の領域。

 ただひたすらに斬ることを集約させた一閃がレーヴァテインを、スルトを、ムスプルへイムを、イル・スフォルトゥーナを、そして死と言う運命を、上下真っ二つに斬り裂いた。

「が――――」

 短い声を最後に、アイツの剣は砕け散り、倒れ伏したその身は炎の世界とともに、海へと落下していった。
 
「……」

 俺は海へ沈み、その波すら失ったことを……戦いが終わったこと確信し、刀を鞘に収めた。

(勝ったん……だよ、な?)

 右手に確かな手応えを感じつつも、勝利の実感が沸かない違和感に、実はまだ戦いが終わっていないのではないかとすら思ってしまう。

 肌をなでる風音が、建物にぶつかる波の音が、全て遠く聞こえる。

 自分の意識が、現実から離れようとしているようだ。
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