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真田十勇士
巻ノ百五 祖父との別れその五

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 まるで風の様だった、大介は孫のその動きを見て言った。
「これは」
「はい、超えましたな」
「はい」 
 共にいる幸村にも答えた。
「佐助め、遂に至りました」
「猿を飛び超えたな」
「山の神の域に達しました」
 目指すその域に至ったというのだ。
「遂に」
「それでは」
「どうした山も谷も崖も問題なく」
 越えることが出来てというのだ。
「城もです」
「越えられる」
 そうなったというのだ。
「これで遂に」
「では」
 猿飛も祖父に言ってきた。
「わしはじゃな」
「うむ、免許皆伝じゃ」 
 まさにというのだ。
「よくやったな」
「そうか」
「それではな」
「これからも調子に乗らずじゃな」
「さらに強くなることじゃ」
「神の域に達してもまだ先があるということじゃな」
「こうしたことに終わりはない」
 大介は孫に彼の免許皆伝に喜んでいるがそれでも締めるところは締めて彼に言うのだった。
「ひたすらじゃ」
「強くなることにじゃな」
「道は終わらぬ」
 まさに何処までもあるというのだ。
「だからじゃ」
「神の域に達してもか」
「神も色々じゃな」
「うむ、かなり色々な神がおるな」
 八百万の神についてだ、猿飛も知っていて言う。
「確かに」
「そうじゃな、だからな」
「神になってもか」
「さらに上の神を目指すのじゃ」
「そうすべきか」
「そうじゃ、お主もここで終わるつもりはないな」
「これで終わるものか」
 実際にだ、猿飛もこう返した。
「もっとじゃ」
「強くなるな」
「そうなるわ」
「ではよいな」
「うむ、必ず強くなる」 
 こう言ってだ、彼は祖父に約束した。そうして言うのだった。
「明日は今以上に、そして明後日はな」
「その明日以上にじゃな」
「強くなるわ」
「その意気じゃ、ではわしはな」
「ここにおってか」
「お主達の話を聞こう、もっともな」 
 ここでだ、大介は飄々と笑って猿飛にこう話した。
「明日にでもぽっくりとな」
「死ぬか」
「そうなるやもな」
「その様なこと言われると困る」
「しかしわしはもう歳じゃからのう」
「百歳まで生きてみてどうじゃ」
 猿飛は笑って祖父に返した。
「このままな」
「百歳か」
「そうじゃ、そして仙人になるか」
「そうしたものは目指しておらぬが」
「いやいや、しかしな」
「それでもか」
「そうじゃ、どうせ生きるならな」 
 長生き、それをするならというのだ。
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