殺害
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からも使っている戦術だということもあってか、リーベには容易く軌道を見切られてしまう。いくら高速を誇ろうが、弾道が分かっていれば避けるのは簡単だと、リーベは体勢を低くしながら短剣を構え疾走する。
「うぁアっ!」
魔法によって発生した風が周囲を凪いでいく。歌詞を紡ぎながらも発された気迫の斬撃を、持っていたクナイで何とか防ぐものの、やはり特注のクナイは鍔迫り合いをするようには出来ておらず。ノコギリのようなギザギザとした刃の短剣に刻まれ、あっという間に耐久力がなくなりポリゴン片と化してしまう。
「っ……の!」
それでも一瞬程度は時間を稼げたと、肩にダメージを受けもはや満足に動かない左腕を、鋭く迫っていた短剣への盾にすると。鋭く走る電気信号に顔をしかめながら、渾身の蹴りでリーベを吹き飛ばすと、日本刀《銀ノ月》を拾って追撃を決める――
「な……」
――はずだった。蹴りを決めるはずの足は動くことはなく、驚愕とともに左腕はリーベの短剣によって斬り飛ばされる。
「ぁは。そういえば……前も左腕、無くしてたっけ?」
その理由は、先ほど路地裏へと投げ捨てたはずの、肩に突き刺さって貫通していた鞭の分離した切れ端。それがまるで生命があるかのように戻ってきていて、俺の足を絡めとって動きを封じ込めていた。何らかのスキルによるものではあるだろうが、あまり拘束は強いものではなく、すぐさま拘束を解いて脱出してみせるが……目の前のリーベにとっては、一瞬だけでも動きを封じ込められれば、それで充分だったのだろう。
「ァァァァァァァァ!」
呪歌の代わりに轟いた耳をつんざく悲鳴とともに、リーベの短剣は俺の心臓を抉るべく迫っている。ただしその悲鳴は狂気の叫びではなく――デジタルドラッグを服用した者たち特有の、ペイン・アブゾーバーが適応された時の悲鳴だった。短剣を握っていたリーベの手の甲には、深々とクナイが突き刺さっていたのだから。
「どっ……こ、からぁ!」
「下調べが足りなかったな……!」
クナイが射出されたのは、背後から……つまり、俺の左肩に空いた風穴から、リーベの右肩に突き刺さっていた。もちろんそんな場所から放てる訳がないが、風魔法による導きは、クナイを疾風とともにリーベの右腕へと放っていた。リーベのもとに放っていた風魔法とクナイは、ただこの一撃のためのダミーにすぎない。
「でやっ!」
そうして予期せぬ痛みに加えて手にダメージを受けたことにより、リーベが取りこぼしてしまった短剣を奪い取ると、丸腰になった彼女へ容赦なく彼女の短剣を振るった。一発目は足への拘束の影響がまだ残っていたために、リーベのバックステップに反応しきれずかすり傷しか与えられなかったが、さらに放った足払いはリーベを転倒させていた。
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