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SAO−銀ノ月−
殺害
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鞭が刺さって負傷した左肩と、足下に取り落とした日本刀《銀ノ月》を見て分かるように、今はこちらが明らかに接近戦は不利。もちろんリーベがそんなことを分かっていないはずもなく、後退しようとする俺を逃すまいと前進しながら、胸を一文字に斬り結んだ。バックステップの距離が幸いしてかすり傷で済んだものの、ただ距離を取るだけでは何も変わらないと察して。

「せっ!」

 攻撃あるのみ、とばかりに向かってくるリーベへしゃがんで足払いを繰り出すしたが、小さい跳躍によって素早く避けられて。カウンター気味に頭部へ放たれた刺突を首をかしげることで難を逃れつつ、こちらがしゃがんで向こうが跳躍したからこそ見えた、無防備な胴体に裏拳を叩き込む。ヒラヒラとしたドレスは見た目と大差はないらしく、こちらもガントレットを装備しているとはいえ、なんら抵抗もなく当たった感覚が伝わってきた。

「あーっ……はぁ……」

 とはいえスキルも使っていないただの裏拳に、防具がなかろうとダメージは大きくなく、リーベには多少のダメージと吹き飛ばしたのみだ。壁に背中から強打して吐息を唸らせている隙に、貫通継続ダメージを与え続けてきている鞭を左肩から無理やり引き抜くと、再利用されないように路地裏へ放り投げた。さらに取り落とした日本刀《銀ノ月》を広いに行きたいところだが、リーベが阻むように俺と日本刀《銀ノ月》の間にステップして割り込んできた。ならばと、ポーチからクナイをいくつか取り出しながら、短いながらも風魔法の詠唱を始めていく。

「なら……歌を歌うね?」

 そうして俺が魔法の詠唱を始めるのと同時に、リーベもまた、ステップを刻みながら《呪歌》スキルのための楽章を唱えていく。先に見せた《GGO》のアバターに似せたリーベのものと同様に、あの店員NPCに成り代わる改造アバター――とはいえ今や、『化粧』似ても似つかないが――でも扱いは音楽妖精らしく、敵味方問わずに耳がある者全てに《呪歌》は伝わっていく。

 重く、苦しい、痛々しい曲。怖い、恐い、怖い、この世の全てが恐ろしい。私は目に見える全てのものに恐怖している、それがたとえ幻だったとしても。恐怖に自らが何をしたかったのか、何者なのかも分からなくなる――そんな負の感情を押し付けてくる歌詞とともに、俺たち双方ともに攻撃力にバフが、防御力にデバフが仕掛けられた。強制的に短期決戦に持ち込むその効果に、俺は望むところだとばかりに用意していたクナイを投げる。

 ――そうしてクナイを放つ……とともに聞こえてきた歌の一節は、何も分からなくなった私に、もう恐怖はないという趣旨だった。

「ッ!」

 唱えていた風魔法は、クナイの発射速度を高速化させるための、いわば風のトンネルのようなもの。疾風を追い風にして発射されていくクナイだったが、これは以前
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