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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十九話 アイデンティティ
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がる。

 不可能なんて乗り越えて、新たな可能性を紡ぐ。

 そして何度切り伏せたって立ち上がり、最強の敵として目の前に現れる。

 だから認めよう。

 イル・スフォルトゥーナにとって小伊坂 黒鐘は、生涯をかけて倒すべき好敵手であると。

「ああ、やってやるよ。 テメェとの殺し合い、心行くまで楽しもうぜぇっ!!」

 黒鐘の強さに応えるように、イルは吼える。

 それに合わせて全身から膨大な魔力が漆黒の炎となって溢れ出し、黒鐘を巻き込んで二人のいる空間を球体のように包み込む。

 漆黒の炎が生み出した灼熱の世界。

「ムスプルへイム。 脱出不可能の獄炎の世界だぁ」

 かつて九つ存在したと言う世界の一つ。

 その世界で生まれたもの以外、そこで生きることができなかったと言われるほどの灼熱世界。
 
 黒鐘は抜け出せなくなった炎の空間を見渡し終えると、

「脱出不可能って言っても、所詮は魔法なら術者を倒せばいいんだろ?」

 挑発的な笑みをイルにぶつけた。

 逃げ場を失ったことへの動揺は一切見受けられない。

 むしろそれがどうしたと言わんばかりの余裕すら感じる。

 先程までの彼とは明らかに違う。

 だが、今までの彼の中で最もイルを刺激するほどの何かを秘めていることは間違いなかった。

「確かに俺を倒せばこの世界は消える。 ……それができりゃの話しだがなぁ?」

「できるさ。 ――――行くぞ」

 言葉を交わすのはここまでだ。

 二人は頷き合い、互いに武器を構え。

 最後の戦いを始めた。
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