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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十九話 アイデンティティ
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魔力光を追いかけて空まで昇ってきたのだ。

 全身から黒き光を纏うように放ち続け、そこにいた。

「なんでだ……坊主はもう、登れねぇはずなのに!?」

 転移場所に向かうのをやめ、モニターに向きを変えたのは、彼の限界にいち早く気づき、その結末を悟っていた男性、ケイジ・カグラだった。

 目の前の光景を、信じられないとばかりに唖然として見つめる。

 彼が紡いできた物語は、ここで終わるはずだった。

 人が生まれながらに与えられていた運命。

 その終わりが訪れ、抗うことなんてできず、受け入れることしかできないはずの運命。

 ケイジは今まで、それを抗おうとして藻掻く人を数えきれないほど見てきた。

 だけど結果は変わらなかった。

 誰も、神が定めたことを否定することは叶わなかったのだ。

 運命には逆らえない。

 それが常識になっていた。

 なのに、

「坊主はなんで登り続けてんだっ!?」

 彼は常識を打ち破り、尚も成長していた。

 今まで多くの人がぶつかり、足掻き、そして散っていった場所で彼は、笑みを浮かべながらそこにいた。



*****



 この現実に誰よりも驚いていたのは、彼の相手をしていたイル・スフォルトゥーナだった。

「何が起きてんだ……あぁ?」

 ケイジの言葉通り、彼は全てを使い果たしていた。

 イル自身、自身の持つ最強の一撃を彼に直撃でぶつけた。

 それで決着だと確信していた。

 彼が立ち上がることなど不可能だ。

 にも関わらず、彼は再び、目の前に現れた。

 傷だらけの体で。

 左手は力なく垂れて、右手だけが刀を握っている姿で。

 だが、

「なんで魔力まで回復してんだぁ……テメェは!?」

 失っていたはずの魔力を取り戻し……いや、最初にあったはずの魔力量を完全に上回っていた。

 回復を超えて進化している。

 そんな光景に困惑するイルに対し、

「イル・スフォルトゥーナ」

 黒鐘は彼の名を呼び、刀の切っ先をイルに向けた。

「俺は、負けない」

 微笑みながら真っ直ぐイルを見つめ、そういった。

「……はっ」

 その言葉に、イルは全身が一気に鳥肌が立つほどの刺激を受けた。

 それは恐怖か?

 いや、違う。

 それは間違いなく、歓喜だった。

「はははは……最っ高だよお前。 本っっ当に最高だァっ!」

 全身の血が滾る。

 人生史上、最も興奮する瞬間が間違いなく今だ。

 きっとこの先の人生をどれだけ必死に生きても、ここまで興奮できることはないと確信できる。

 何度も味わった絶望も死も、全部切り伏せて立ち上
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