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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十八話 限界
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到着しちまったのさ」
「っ!?」
その言葉で、全員が理解した。
小伊坂 黒鐘の動きが鈍り、敗北した原因にして最大の理由。
――――強くなりすぎたのだ。
黒鐘は模倣と言う能力と、両親を失ったショックから立ち直ることで得た強靭な精神を手にした。
それが彼に訪れるいくつもの壁を、新たな力を身につけ、物凄い勢いで突破させていった。
それは彼の敵であるイル・スフォルトゥーナも同様だ。
だから互いに限界をぶつけ合って、超え合って強くなっていった。
しかし、二人には決定的な違いがある。
――――天才か凡人かと言う、生まれながらに存在する逃れようのない“運命”。
凡人は必死に、地道に努力し、限られたわずかな人間が、いつか達人の領域に至るだろう。
しかし天才は、凡人を至る全てを超えた遥か先に頂きがある。
凡人には決して届かない、最果てのその先。
そして凡人だった黒鐘は、天才と間違われるほど早い段階で達人の領域にたどり着いた。
だから至ってしまったのだ。
本来であれば数十年後に至るはずの場所に、到着したのだ。
だけど凡人の限界はその先がない。
つまり黒鐘は、動けなくなったんじゃない。
彼を縛っていた鎖のようなものとは、つまり運命だ。
凡人の限界。
それ以上にはいけないと言う、神様が生み出した運命の鎖。
先に進んでいたイル・スフォルトゥーナを前にして、これ以上進むことを運命が許さなかったのだ。
天才と凡人だった時点で、その戦いの勝敗は明確だった。
「坊主はもう、あのガキにゃ追いつけない」
少女たちは見てしまった。
憧れた少年の目指した先に待っていたものを。
もはやどれだけの努力や想いを重ねても、彼は今より先へは進めない。
二人の勝敗は実力ではなく、想いの大きさではなく、背負ってるものの重さではなく、もっともっと前――――生まれた時からつけられていた運命によって決まっていたのだ。
「そんな……」
雪鳴は、
「こんなのが、私達の目指す頂点……なの?」
抑えきれない怒りを、ケイジにぶつけた。
黒鐘の運命は、敗北は、決してケイジのせいじゃない。
反論できたはずのケイジは、しかし雪鳴の怒りを受け止めて、言葉を紡ぐ。
「嬢ちゃん達は心配ねぇ。 俺の見る限りじゃ天才の分類だ。 坊主と違って果てにゃ至るのはかなり時間がかかるだろうよ」
そういう連中は見てきたからな、とケイジは経験談を混じえて伝えた。
「それじゃ、お兄ちゃんは……」
「坊主はここまでだ。 クリア、最終回、終点、完全攻略、完全制覇……ってことだ」
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