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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十七話 決戦
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…いや、テメェじゃなくても、誰にも出来やしねぇ。 なら、答えはテメェ一人の力だけじゃねぇってことだ」

 そう。

 天流・第参翔『魔払ノ鏡』は俺が覚えている天流の技で唯一のカウンター技だ。

 刀で受けた敵の攻撃。

 それをそのまま乗せて身体を円に回転させることで力を循環させ、俺の打ち込みに乗せて放つ剣技。

 相手の攻撃の威力、放つタイミングなどをわずかでも間違えれば体勢は崩れて大きな隙になる繊細な技。

 相手の動きや癖を鋭く見切り、模倣できる眼がある俺だからこそできる剣技だ。

「お前とはもう何度も刃を打ち合ってるから、癖や力加減は大体掴んだ」

 それに、必要な休息をとったことで今の俺のコンディションは過去最高だ。

 視界に映る景色に霞は一切なく、耳に入る音に雑音はない。

 肌に触れる風や熱、衝撃を数値化できるレベルで感じ取り、物質名が分かるレベルで匂いを捉えることができる。

「行くぞ!」

「来いやぁっ!!」

 俺とアイツは同時に飛んだ。

 一瞬で互いの距離の中間に到着し、互いの刃が衝突し、互いの衝撃によって弾かれる。

 そこからはその場から一切動かず、加速と限界、そして我慢比べの世界に入る。

 今の一閃よりも速い一撃を振るう。

 今よりも速く、もっと速く、もっと……もっとッ!

 今までにない加速感を感じながら俺とアイツは無数の剣線を描いた。

 その度に弾ける火花と、外へ飛んだ斬撃は雲を切り裂き、海を切り裂き、建物を切り裂いた。

 一秒が途方もなく長い時間に感じる頃には、俺たちは呼吸を止めて目の前の敵だけに集中していた。

 苦しい時間が終わるには、相手を斬るかこちらが斬られるかの結果が起きなければいけない。

 諦めればすぐに解放されるが、そんなのを自分で自分に許すことなんてできない。

 俺たちは負けられないから。

「せいっ!」

「おらぁっ!」

 気合一閃。

 俺たちの一撃は激しい衝撃波を生み出しながら轟音を響き渡らせる。

 刀身を振るう音。
 
 鉄と鉄が擦れ合う音。
  
 大気を揺らすほどの轟音。

 火花が生まれて散る音。

 様々な音を響かせながら、それでも俺たちは止まらない。

 まだまだ加速する。

 酸欠で視界がぼやけ、頭もぼーっとする。

 全身の感覚だって衝撃を受けすぎたせいで痺れて鈍い。

 限界が近づいていた。

 それはきっとアイツも同じだ。

 それでも止まらない、止まれない。

 斬る!

 その結果を掴みとるまで、俺たちは止まれない。

「ぉ……ぉぉおおおおおおおっ!!」

「おらあああああああああっ!!」


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