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レーヴァティン
第二十一話 風呂屋での情報収集その九

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「違う」
「それでか」
「あちらでは蕎麦は噛まない」
「喉ごしか」
「それを味わう」
 そうした食べ方をするというのだ。
「そこが違うからだ」
「だからか」
「関西では噛む」
 そうなるというのだ。
「俺もそうしている」
「成程な」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「味も楽しんでいる」
「成程な」
「東京は東京だ」
 英雄ははっきりと言った、否定した言葉だった。
「大阪は大阪だからな」
「大阪もざるそば食うしな」
 うどんが多いことは確かだが、だ。
「大阪の食い方があるか」
「そうだ、昆布のつゆに合ったな」
「そういうことか」
「御前もそうだな」
「まあな」
 そう言われるとだ、久志もだった。
「蕎麦は噛むな」
「そうだな」
「ざるとかせいろはな」
 そうするというのだ。
「絶対に」
「それは主義か」
「そうなるな」
「蕎麦の食い方にもそういうのあるんだな」
「こだわりと言ってもいい」
 英雄はこうも言った。
「蕎麦の食い方のな」
「粋か」
「恰好よく食うにはだな」
「江戸っ子ってそういうの五月蠅かったっていうな」
 所謂『粋』というものだ、その気風のよさもまたそれだ。江戸っ子達はとかくそうしたものにこだわってきたのだ。
「チャキチャキの何とかっていうな」
「そうだな」
「さっぱりしたな、けれどな」
「けれど。何だ」
「江戸っ子気質はいいにしてもな」
 それでもというのだ。
「そこは人それぞれだよな」
「東京生まれでもだな」
「ああ、自称チャキチャキの江戸っ子でもな」
 自分ではそう言っていてもというのだ。
「粘着で自己中で嫌な奴いるな」
「そうした奴は何処にでもいる」
「そうだよな」
「自称は自称だ」
 それに過ぎないというのだ。
「生まれはそうでも中身までそうか」
「わかったものじゃないか」
「代々東京に生まれ育っていてもだ」
「中身は江戸っ子じゃないのもいるか」
「そこはそれぞれだ」
「そうだな、貴族や坊さんでもな」
「中身は賊という奴もいるな」
 そうした輩はというのだ。
「所謂似非はな」
「そっちの世界でもいるか」
「いた、そしてだ」
「倒したか?」
「そうした」
「その話になるか」
「御前は会ったか」 
 そうした似非と呼ぶべき輩にというのだ。
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