第三章
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「私はそうしてるし、そしてね」
「本気でお祖父さんに勝つのね」
「空手九段で気功も使える人に」
「鬼に」
「鬼神になってね」
強い決意と共に言う、そして沙綾は修行を続けて強くなっていった。だがそれでも家の道場ではだ。
祖父と手合わせをしてもらい敗れてだ、苦い顔で言った。
「また負けたわ」
「負けるものか」
祖父も強い声で言う。
「わしは誰にもじゃ」
「負けないっていうのね」
「本気で向かっておるからな」
実際に祖父は一切手を抜いていなかった、相手がまだ中学生の孫娘でもだ。
「負ける筈がない」
「修行したのに」
「何日じゃ」
「小学校の時からよ」
「まだ数年じゃな」
その修行の歳月はというのだ。
「そうじゃな」
「まだまだっていうのね」
「わしは六十年以上休まず修行しておるわ」
空手のそれをというのだ。
「そのわしにそうそう勝てるものか」
「じゃあ私も六十年以上修行しないとお祖父ちゃんに勝てないっていうのね」
「御前に出来るか?」
「六十年以上修行する前に勝ってやるわよ」
勝負は終わった、だが沙綾の目は勝負を終えた者の目ではなかった。自身の祖父をきっと見据えて強いままだった。
「お祖父ちゃんが死ぬまでね」
「わしも流石にあと六十年は生きられないからな」
「だからよ、お祖父ちゃんが生きていて動ける間にね」
その間にというのだ。
「絶対に勝つから」
「ならそうしてみよ」
祖父も受けて立って言葉を返してみせた。
「わしが生きている間にわしに勝て」
「お祖父ちゃんより強くなってね」
「その時を楽しみにしておるぞ」
祖父は孫娘を見て高らかに笑っていた、だがその見る目は実に暖かいものだった。そして沙綾にしても。
部活の後でだ、こんなことを言った。
「今日も帰ったらまた修行してね」
「お祖父さんと勝負ね」
「そうするのね」
「そうしてやるわ、どんどん強くなってね」
そうしてとだ、同じ空手部の部員達も燃える目で言うのだった。
「そうしてよ」
「勝つっていうのね」
「そうよ、何時かでも絶対にね」
まさに何があってもというのだ。
「最後は勝つわよ」
「何か沙綾ちゃんにとってお祖父さんって壁ね」
部員の一人が力強く言う沙綾に笑ってこうしたことを言った。
「目標なのね」
「そうね、乗り越えるべきね」
「そうした人よね」
「つまりライバル?」
「お祖父さんでも」
「だから尊敬してるけれど大嫌いなのね」
「そうなのかしらね」
他の部員達もその沙綾を見てこう言った。
「それで絶対に勝つ」
「そう誓ってるのね」
「そうかもね、合気道をしてるのも」
空手以外にこちらの修行もしているのだ。
「お祖父ちゃんに勝つには空手だけじゃない」
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