プロローグ 白い少女と黒い猫
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なしなのは秘密だ。
「ううん。そっちじゃなくてあっち」
少女が指差したのは新校舎ではなく、その裏にある旧校舎の方角だった。
さつき顔面蒼白である。
「い、いやよ。なんで私があんな校舎に近寄らないといけないのよ! 私は絶対に旧校舎になんか行かないんだからね! 絶対に行かないから、絶対に!」
それ、何かのフリか? と思えるくらい何度も何度も『絶対に』を強調するさつき。
「そう。でも、お姉さんは必ずあそこに行くことになるよ? 絶対に」
「な、なんでそんなことわかんのよ??」
「それが運命だから、だよ。じゃあね?」
「ちょっ! ま、待ちなさいよ!」
後部座席から立ち去ろうとする少女に掴みかかろとするも、狭い車内の中を移動するのは大変で、さつきが後部座席に移動する前に少女の身体は消えてしまった。
「こらぁ、待ちなさ__」
後部座席のドアを擦り抜けて車外に出た彼女の姿を見ようと、助手席の窓から顔を出して……。
………。
「どうしたの? お姉ちゃん」
心配そうな敬一郎の言葉でさつきはハッとした。
「あ、あれ?」
辺りを見渡すさつき。さっきまでいたはずの少女の姿はどこにもない。
そして、何故かトラックは停車していない。まるで、時が戻ったかのように、何事もなかったというような感じで学校の前を過ぎ去っていく。
「さつき、危ないぞ?」
父親、礼一郎の言葉に訳がわからないと思いながらも、素直に従ってさつきは助手席におとなしく座ることにした。
(さっきのアレは……夢? そ、そうよ。あんな変な出来事現実に起きるわけないじゃない!)
「お姉ちゃん……大丈夫?」
さつきは心配する敬一郎に「大丈夫よ。ちょっとボーッとしちゃっただけよ」と返した。
あれは、ただの夢。そう自分に言い聞かせた。
後部座席に座っていた黒猫のカーヤが、座席下に潜り込んで、落ちていた黒い携帯電話で遊んでいるとは、つゆ知らずに。
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