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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十六話 決戦前夜
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思えないよな。

 だってそれを見せるということは、同時に心の傷を見せびらかすようなものなのだから。

 身体と心。

 表と裏。

 それを全て見せる相手なんて、そうはいない。

 フェイトがケイジさんたちに事の詳細を話さない理由は、これが大きいのかもしれない。

「でも」

 不意に、俺とフェイトの間に立っていたドアが横にスライドして開いた。

 それによって俺たちの間に壁は消え、俺はこちらに向かって立っていたフェイトを肉眼で捉えることができた。

 ……のだが。

「って、服着てないじゃん!?」

 上下黒の下着姿で立っていたので流石に驚いた。

 慌てて後ろを向こうとしたところが、俺の両腕を掴んでそれを制止させたのはフェイト本人だった。

 俺は最後の抵抗として上を向くことしかできない。

「見て」

 そんな俺にフェイトは短い口調でそう言って、余計に俺を慌てさせる。

「いや、でもっ!」

「お願い。 ちゃんと見て」

「ふぇ、フェイト……」

「黒鐘になら見せられる。 私の抱えてきた、全部」

「……」

 そう言われ、ついに言葉を失った俺は何も言えず、その場で固まることしかできなくなった。

 棒立ちとは今の事を言うのだろうか。

「私、全部話す。 全部見せる。 黒鐘に知って欲しい、見て欲しい。 私の全部を……お願い」

「……わ、分かった」

 そこまで言われては、断れない。

 フェイトがどれだけの覚悟と勇気を持って自分の全部を見せようとしたのか。

 それを知ってもなお、拒絶し続けるわけにはいかない。

 フェイトの覚悟と勇気に、今度は俺が応えなきゃいけない。

《監視カメラの接続をオフにしました。 今、この場はマスターたちしかいません》

「《ありがとう、アマネ》」

 気が利く相棒に感謝しつつ、俺は深呼吸する。

 そして俺は、ゆっくりと下を向く。

 覚悟を決めたのなら一気にと思ってみたが、そこまで強い勇気がなかった俺は、フェイトの頭が視界に入ったところで緊張が増した。

 けど、フェイトの顔を見て、

 羞恥と恐怖で顔を赤くして、目に大粒の涙を溜めている彼女を見て、覚悟と勇気が決まった。

 緊張は、気づけばどこかへ飛んでいた。

 そうして俺はフェイトの身体を見た。

 首から下は、赤く腫れ上がった部分が多く、しかも満足な食事をとっていなかったのかやせ細っていた。

 痛々しい。

 何度もそう思って、改めてそう思った。

 顔を叩かなかったのがせめてもの救いと思ってしまうくらいに、目を背けたくなるような現実が広がっていた。

 胸の中で湧き上がる、ドス黒い渦。

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