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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十六話 決戦前夜
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「失礼しま」
「「え?」」
ドアが開いた瞬間、視界には下着姿のフェイトとアルフがいて、呆気にとられた様子で目が合い、硬直した。
どうやら着替え途中のようで、フェイトは黒、アルフはオレンジの下着の上にシャツやスカートを履こうとしていたようだ。
「…………す」
そんな状況を理解した所で俺はようやく入室の挨拶を終え、
「キャーッ!!」
「入る時くらいノックしろぉ!!」
「し、失礼しました!!」
二人の悲鳴に俺は慌てながら退室の挨拶をしたのだった。
「アタシもフェイトも洗面所で着替えるべきだったのは確かだけど、ノックもしないアンタもアンタだよ」
「いやほんと、ごめんなさい」
1Kくらいの部屋の真ん中で俺は正座になって仁王立ちのアルフに謝罪していた。
フェイトは羞恥が抜け切れておらず、バスルーム前の浴室で引きこもっている。
そういえばフェイトの着替え途中を見てしまったのはこれで二度目になる。
あの時から同じことはするまいと誓ったはずが、結局同じことをしてしまった上にアルフまで見てしまった。
罪が重なるなか、アルフは説教しつつも本気で怒っている感じではないみたいで、その表情はすでに落ち着きを取り戻している。
「まぁアタシはもういいんだけど……」
「あぁ……」
アルフと一緒に視線を浴室のドアへ向けた。
檜を思わせるデザインながらその素材は鉄より硬く、密封性のある金属で作られたドア。
そこからは何とも言えない暗いオーラが隙間から漏れている……ように見える。
二度目とは言え、相当恥ずかしかったのだろう。
「話題探しがより難しくなったな」
困惑しながらも、まずは謝罪をしないことにはどうにもならないのでドアの前まで行き、軽くノックする。
「フェイト、聞こえるか?」
……。
返事はない。
寝てるんじゃないかっていうくらい内部からの物音が一切聞こえない。
一応、ドアに耳を当てれば内部の音を拾うくらい大したことないけど、流石に無礼に無礼を重ねるわけにもいかないのでそこは避け、きっと声は届いているだろうと信じて話す。
「フェイト、ごめん。 またおんなじことしちゃって、ホントにごめん」
ドアを前に深々と頭を下げる。
後ろから『また?』と言うアルフの疑問が聞こえた気がするが、そのことは今触れないでいただきたい。
「……黒鐘」
頭を下げてしばらく反応を待つと、ドアの先からフェイトの声が聞こえた。
取り敢えず無視されずに済んだことに安堵すると、フェイトから質問が来る。
「私の身体、覚えてる?」
「え……っと」
覚えてる。
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