第二章
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「駅前のね」
「ああ、あそこね」
「あそこの商店街で買ったのね」
「あそこにこんなにいい傘あったのね」
「そうなの、いやまさかね」
傘を差していて嫌いな雨の中だがそれでも言う有紗だった。
「こんなに奇麗な傘があるなんてね」
「それで差してよね」
「本当に嬉しそうね」
「お洒落な傘だからね」
「それを差して登校してて」
「それで嬉しいのね」
「そうなの、本当にね」
実際にと言う有紗だった。
「今は楽しい気分よ」
「雨が嫌いでも」
「それでもなのね」
「その傘差してるから幸せなのね」
「そうだっていうのね」
「本当にね」
こうした話をしてだった、有紗はこの日は上機嫌で登校しその上機嫌のまま学校での生活を過ごしてだった。
下校の時も雨が降っていたがその時もえんじ色の傘を差して下校した。これは雨の日は常にそうなっていた。
それでだ、何時しか雨が降るとだった。
有紗はにこりと笑ってだ、こんなことを言う様になっていた。
「じゃあ今日もね」
「あの傘を差してなの」
「ええ、学校に行くわ」
家で母に笑顔で話した。
「そうするわ」
「前まで雨が降ると不機嫌だったのに」
「それが変わったのよ」
「あの傘を差してよね」
「そうして行くから」
登校、そして下校をするからというのだ。
「だからね」
「機嫌がいいのね」
「そうなの、髪の毛はね」
不機嫌な理由のもう一つのそれはというと。
「お母さんの言う通り雨の日は束ねたらね」
「気にならないでしょ」
「そうね、まあ野球はサッカーはね」
試合が中止になることはというと。
「我慢するわ」
「それよりも傘っていうのね」
「あの傘を差せるから」
お気に入りのその傘をというのだ。
「もうね」
「じめじめしてるのとかもよね」
「我慢出来るわ、それに大きな傘だから」
ただ奇麗なだけでなくてだ、その傘はかなり大きく有紗の身体も持っている鞄も完全に覆ってしまうのだ。
「濡れないしね」
「あまり強い雨だと地面から跳ね返るけれどね」
「それはまあね」
「後で拭くしかないわね」
「そうするしか。まあそうした日は滅多にないし」
雨が降ってもそこまで強い雨が降ることはというのだ。
「ゲリラ豪雨でもね」
「降ってる間は何処かで雨宿りしてるでしょ」
「流石に濡れるからね」
濡れるのは嫌だからだ。
「それはだけれど」
「あの傘を差してると」
「やっぱり違うわ」
気分がいいというのだ。
「本当に」
「まああんたがそこまで機嫌よくなったのは」
雨の日にとだ、母は娘に微笑んで話した。
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