第一章 天下統一編
第二十五話 牛鍋
[5/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
ある。でも、彼がよく保護したものだ。余程気に入ったのだろうか。
「蒲生殿、高山彦五郎は前田様に厄介になっているのですか?」
「そうだ」
「よく前田様は高山彦五郎を保護されましたね」
俺は疑問を蒲生氏郷に投げかけた。蒲生氏郷はくすりと笑うと口を開いた。
「『吝嗇で知られる前田様が何で?』と言いたげな顔だな」
俺は素直に頷いた。
「高山彦五郎の人柄と、その多才さに惚れたのだろう。私も内心は客将として迎えたいくらいだ。お前も気に入る」
高山右近に会ってみたいと思うが、秀吉に追放された人物であることが気になる。蒲生氏郷は美味い料理が食えると俺を誘った。高山右近が蒲生氏郷を饗応するということだろう。客将の立場の人物の饗応で美味しい料理が食べられるのだろうか。
「高山彦五郎の饗応なんですよね?」
俺は暗に食事を期待していいのか聞いてみた。
「本当に美味いから安心しろ。高山彦五郎は客将とはいえ一万石の食禄を前田様から与えられている。あまり相手を侮っては失礼になるぞ」
蒲生氏郷は表情を引き締め俺に注意してきた。
一万石の食禄!?
俺より実高と同じじゃないか。けちな前田利家が一万石も出す。それだけで出すだけの価値がある人物なのだろう。築城の知識も豊富だし、戦歴も優秀だからな。ただ、秀吉の手前客分にするのが精一杯だったのだろう。前田利家の本音は直臣にしたかったのかもしれない。でも、前田利家の性格ではそんな度胸はないだろう。
「大盤振る舞いですね」
「そうだな」
蒲生氏郷は口元に指をあて笑った。
「実はな。高山彦五郎がお前に会いたいと言ったのだ。それで食事に誘ったのだ」
「高山彦五郎が私に会いたいと言ったのですか? 私は高山彦五郎とは面識がありません」
「今やお前は有名だからな。四万の軍勢で落とせなかった城をたった五百の兵で攻め落とした。どんな人物か興味を抱くことは当然のことだろう。そして、私はお前の舅になる予定だ」
高山右近は親交のある蒲生氏郷が俺と縁戚になることを知り、蒲生氏郷に仲介を頼んだということか。
「関白殿下への口添えはできません」
「期待していない」
蒲生氏郷は言葉を切ると歩くのを止め厳しい表情で俺のことを見た。少し怒っているように見える。
「高山彦五郎はそんなせこい真似はしない」
俺が高山右近をうがった見方をしたことが許せないのだろう。ここまで怒るということは俺の懸念は杞憂だったようだ。
「口が過ぎました。申し訳ありませんでした」
「分かってくれればいい」
蒲生氏郷はそう言うとまた歩きだした。彼は真っ直ぐ芯の通った人物と感じた。俺もこんな男になりたいと思ってしまう。
でも、こういう人物は戦
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ