第一章 天下統一編
第二十五話 牛鍋
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一度言葉を切ると俺のことを真剣な表情で見た。
「その側室を遠ざけろとは言わない。義妹に一度会って欲しい。それでも義妹を好きになれないというなら、私から関白殿下に縁談の解消を願い出る」
「今更、縁談話を解消できるわけがないと思います」
許嫁を解消できる訳がない。幾ら蒲生氏郷でもできないはずだ。秀吉は公式に俺と咲姫の縁談を宣言している。
「良いのだ」
蒲生氏郷の声音は強い意志を感じさせた。彼が本気であることが分かる。
何なんだ。
俺が悪者みたいじゃないか。
蒲生氏郷が勝手に縁談を進めておいて、こんな言い方をするのか。
卑怯過ぎるだろう。
「話題を変えよう。豊臣侍従殿、一緒に美味い食べ物を食いにいかないか?」
蒲生氏郷は他人行儀に俺に食事の誘いをしてきた。
何で俺がお前と飯を食いにいかなくちゃいけない。お前のおかげで良い気分だったのが台無しだ。
「無理にとは言わない」
一々かんに障る言い方をする。
「調度腹が減りましたからご一緒します。私は貧乏だから金を持っていませんよ」
蒲生氏郷は笑った。貧乏なのは事実だからな。韮山城の城攻めで散在してしまった。
「金の心配はいらない。私も誘われたのだ」
「誰のことろに行くのですか?」
「高山彦五郎のところだ。前田家の客将をしている。珍しい食い物を食べさせてくれるというので今から行くところなのだ」
高山彦五郎って誰だ。高山というと、高山右近くらいしか知らない。
「その方はどんな人物なのです?」
俺は高山彦五郎という人物に興味が湧き、彼のことを聞いた。
「高山彦五郎は元は播磨明石六万石の大名でキリシタンだ」
俺は言葉を失った。キリシタンには関わり合いたくない。
高山彦五郎は高山右近のことじゃないのか。彼は熱心なキリシタンだったように思う。
そういえば、蒲生氏郷もキリシタンだった。
「高山彦五郎は築城の縄張りだけでなく、内政・軍事にも通じている。会っておいて損はない」
蒲生氏郷は俺を是が非でも高山右近に合わせるつもりのようだ。俺は蒲生氏郷についていくことにした。
「どこに行くのですか?」
俺の前を蒲生氏郷は悠々と歩いている。俺は彼から目的地を告げられず、蒲生氏郷の背中を見ながら付いていっている。
「前田様の陣所に向かっている」
「前田様ですか!?」
高山右近に会いに行くのに、どうして前田利家のところに向かうんだ。
「お前でも驚くことがあるんだな」
蒲生氏郷は表情を崩した。高山右近は秀吉に追放されたまでは知っていた。
その後、前田家に厄介になっていたのか。
前田利家なら秀吉が追放した相手でも保護できる立場に
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