第一章 天下統一編
第二十五話 牛鍋
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は分かっている。咲姫との縁談は豊臣宗家、秀吉、の意向だ。これが撤回されることは絶対にありえない。関東に領国が確定している俺と奥州に移封される蒲生氏郷が閨閥で繋がることの効果は大きい。
政略と分かっているが、咲姫に会ってみたい気持ちはある。
でも、俺はお世辞にもかっこよくない。
俺は凡人・木下家定の子供だ。秀吉や同僚、家臣達は俺を名将ともてはやすけど、俺の見た目は平々凡々だ。
俺は大和大納言家の連枝となった。だから、俺と咲姫は似合いの相手なことは間違いない。
咲姫は間違いなく美女だろうと思う。でも、俺はいつも彼女に劣等感を抱きながら生活をしていくかと思うと途端に憂鬱になる。
側室の夏は美人だが、家臣筋ということもあり拒絶されることがない安心感があるんだと思う。
夏に対して失礼だし、卑怯な考え方だとは思っている。でも、仕方ないじゃないか。美女とお近づきになる人生とは無縁だったんだ。
自己嫌悪になってくる。
それに夏に申し訳ないと思ってしまう。仕方ないことと分かってる。最近、夏と心の距離が近くなった気がする。その関係が壊れるんじゃないかと心配だ。夏は俺のことを何とも思っていないかもしれない。でも、俺に少しでも情を持ってくれているなら、夏を傷つけるかもしれないと不安になってくる。許嫁が決まって以来、夏に会っていない。
夏と顔を合わせづらかった。
一度彼女に会っておいた方がいいな。夏には咲姫との話をちゃんとしておく必要がある。
「婿殿、何を考えている?」
蒲生氏郷は物思いに耽る俺を凝視していた。
「いいえ。何も」
「思うところがあるなら話して欲しい」
蒲生氏郷は俺への言葉づかいを変えた。俺を対等な相手として喋っていることが分かった。
「私はお前を見込んで、お前に義妹を嫁に出すことを決めた。そのお前が、その態度では義妹に申し訳ない。私と妻は義妹には幸せになってほしいと思っているんだ」
蒲生氏郷は俺に胸襟を開いて語りだした。蒲生氏郷の義妹に対する家族の情を感じた。その言葉に嘘偽りはないだろう。
俺は何と答えるべきだろうか。
「私には側室がいます」
俺は言葉を切った。
「彼女は政略で私の側室になりました。はじめは人質として扱う気持ちでした。でも、会話をする内に彼女と打ち解け情が湧いてきました。今回の縁談で彼女を傷つけることになるのではと思いました」
「その女子が好きなのか?」
蒲生氏郷は沈黙し、間を置いて俺に質問してきた。
「分かりません。でも、私を短い間ですが私の心を支えてくれたことは確かです」
俺は蒲生氏郷の目を真正面から見据えた。蒲生氏郷も俺の目を見据えた。
「そうか。私の見込みに間違いはなかった」
蒲生氏郷は
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