精神の奥底
69 希望の末路
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ている患者は発作が起これば、酸素を得ることが困難になる。だったら身体が酸素を必要としない状況を作ればいい。前に医者だった祖母から聞いたことがあります」
七海は知識はあるものの、やはり信じられずにベッドで横になっている彩斗に近寄った。
今朝方から完全に別世界に連れてこられたかのような感覚がまだ抜けておらず、置かれている状況も完全に把握できてはいない。
ただの同級生だと思っていた少年が強大な何かと戦っていたというだけでも現実味が無いと言うのに、今いるこの場所もかなり非日常的だった。
広大な地下ガレージに中央部に設置されたデスクは市販のものでは考えられないレベルのスペックのPCと大量のディスプレイで常に何かがモニタリングされており、数台の車両が並ぶ。
更に振り返れば、テレビでしか見ないようなスーパーコンピューターやサーバー、武器の数々がこちらを睨みつけている。
しかし反面、地下水の流れる川のようなものと、観葉植物が並んでいるなど人工的ながらも何処か自然が混じっている。
その光景はスパイ映画の秘密基地を想像とさせる。
状況を飲み込みきれていない七海であったが、とんでもない世界に足を踏み入れてしまったのだけは理解していた。
そんな七海を尻目にハートレスは続ける。
「そう。そしてこの子はちょうど心臓に爆弾を抱えてるわ」
「え?」
「もちろん、薬は投与してるし、それが直接の原因とも思えない」
ハートレスはそもそも彩斗の身体のことを把握していなかったメリーと七海に『W.O.A.』の入った注射器を見せた。
アイリスは彩斗の身体に何処か異常があるのは薄々は感づいていたものの、その予感が的中したことに不思議と悔しさを覚えた。
「ここからは私の勘だけど、恐らくこの冬眠もどきは副産物に過ぎないわ」
「冬眠が副産物?」
「今、この子の脳と身体は繋がっていない」
「え?」
「正確には脳の神経伝達物質が途絶えている。つまり脳から身体への命令が送られていない」
「じゃあ、自分で起き上がることは疎か、喋ることもできないってこと!?」
「お腹が空いても食べられないし、口も利けない」
ハートレスは彩斗の頭に触れた。
「じゃあ、原因は?」
「さっき、この子が不良連中と喧嘩したって言ったわね?恐らくそれが…いえ、きっとそれだけではないのでしょうけど」
「……」
「この子、口ではこの街なんて無くなった方がいいなんて言う割に、心の何処かで真っ当な街に戻って欲しいと思ってたんでしょう。恐らくあの高垣美弥という少女との出会いが本人も気づかないうちにそれを決定づけさせた」
「ミヤさんが……」
「彼女が襲われて、復讐に走ったことで彩斗は沢城アキとしての人生を続けることができなくなった。それでもなおValkyrieと戦い続けたのは……き
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ