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流星のロックマン STARDUST BEGINS
精神の奥底
69 希望の末路
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夏から秋へと季節は移り変わった。
先程までの焼けるような暑さなど忘れ去られ、身体の芯から冷えていく。
空は雲で覆い尽くされ、冷たい雨が降りしきる。
決して豪雨というわけではないが、止む気配を全く感じさせない。
街ではそれに釣られるように、悪意が活発になっていく。
そして遂に恐れていた事態に発展していた。
街中でパトカーと救急車のサイレンが鳴り響く。
まだ中央街や電気街といった都市機能を担う中心部は被害が出ていないが、プライムタウンはほぼ壊滅、数カ所のネオン街を中心に広がっていることは明らかであった。
不良はもちろん半グレの連中は銃器を振り回し、恐喝して金を巻き上げる。
そしてネオン街を根城にした暴力団はValkyrieから入手したユナイトカードで縄張りを広げるべく抗争を始めた。
更に一般市民同士が争い、電波変換した人間には警察も歯が立たず、被害者が増え続けている。
実際に事件が発生しているのは僅か数カ所であっても同時にこれだけのことが起こるなど前代未聞だった。
巻き添えを食った人々はこの世の終わりを見た心境だった。
身体の傷は大したことがなかったとしても、心に負った傷は一生消えない。
そんな絶望を抱いたまま助けが来るのを待っていた。
そしてここにも1人、身体と心に傷を負った少年がいた。
まだ死んではいないが、とても生きているようにも感じられない。
安らかな表情を浮かべ、身体だけを置き去りにして何処かへ行ってしまったようだった。
そしてベッドの周りには彼の帰りを待つ者たちがいた。

「……今、なんて言ったの?」

アイリスは自分の耳を疑った。
メリーと七海もその言葉の意味が分からず、返す言葉が思いつかない。

「だから……冬眠」
「冬眠……?」
「今のこの状況を一言で簡単に言い表すなら、そこのあなたが指摘した通り、シンクロナイザー、いえ、彩斗は動物で言うところの冬眠している状態に近い」

ハートレスは七海を指差しながら、いつも通り顔色一つ変えずに言い切った。
しかし流石の異常事態に声にその焦りは顕著に現れていた。
いつもの声のトーンよりも低い上に少し鼻声だ。
自分でも今、彩斗が置かれている状況を完全に把握できていないし、対処の方法も全く考えつかないのだ。
淡々と検査機器を操作しながら冷徹な仮面の下では唇を噛んでいるのはこの場にいる誰もが察していた。

「だからさっき体温が」
「でも人間が冬眠するなんてことがあるの?」
「理屈上は不可能ではないわ。雪山で遭難した人間が冬眠に近い状態になることでエネルギーの消費や酸素を節約して無事に救出された話もあるし、今では医療分野で人為的に冬眠状態を作ることで治療を行おうとする研究も行われてる」
「冬眠で治療?」
「それ知ってます!例えば心臓病を抱え
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