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ダン梨・T
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静かでいい」

 翌日、ベルの徹夜強攻合宿に付き合わされた俺は、途中でバテたベルを抱えてファミリアに戻り……紐神様に盛大に怒られた。やっぱ唆すんじゃなかったかなぁ、と思いつつ、俺は夜明けの太陽を眺めながら本日の梨を齧った。
 



 = =



 バミューダ・トライアングルという少年について、ヘスティアは困っている。

 いや、別に彼が問題児でベルが優等生という訳ではなく、ヘスティアからしたらどっちもタイプの違う問題児である。しかし敢えてバミューダ側に目を向けてみると、やはり困っているのである。

 初めて出会った時、ベルはヘスティアに誘いをかけられて地獄に仏とばかりに目を輝かせたが、バミューダは別段ヘスティアの下に行きたい風でもなかった。なのに眷属の誘いには応じた。何故か聞くと、「成り行きにまかせるのもいいかと思って」と悪びれもせず笑った。恩着せがましい事を言う気はさらさらないが、客観的に見て自分を拾ってくれた神に対して取る態度ではない。

 つまるところ、バミューダとしてはヘスティア個人はどうでもよくて、成り行き上面白そうだからファミリアになったに過ぎない。そんな享楽的なところが逆にヘスティアは心配だった。自分が面白そうだという理由だけでホイホイ仕える神を決めるようではろくでもない神に捕まってろくでもない目に遭いそうな気がしたのだ。

「ヘスティア様も十分ろくでもない神な気がしますよ?友神にたかって紐生活してた上に浪費癖のせいで貯金ないんでしょ?よっ、安月給!」
「ぐぶほぉぉぉーーーーーッ!?」

 そしてこの毒舌である。バミューダと言う少年は、とにかく年齢に不釣り合いな程によく舌が回るのである。年相応の幼さを残したベルとは大違いで、正直に言うとその交渉能力の高さで猛烈に買い物を値切るので助かっている。助かっているのだが……。

「バミューダ君が何考えてるのか、さっぱり分かんない……!」
「神様ー、それ前からですから気にしない方がいいですよー」

 割とどうでもよさそうなベル曰く、約2年の付き合いの中でバミューダの考えている事など悪だくみ以外感じ取れたことがないそうだ。しかも、そもそもバミューダは来歴からして謎だらけ。ベルのおじいさん曰く「寄る辺なき子」だそうで、どうやら家族はいもしなければ覚えてもいないようだ。故にベルはそういう人だとして割り切っているという。

 何を考えているのか分からない、と言ったが、神は人の嘘くらい簡単に見抜ける。しかし「何をやらかすか」、すなわち未来に関しては何一つ分かりはしない。そういった点において、バミューダは何を目指しているのかという行動指針が分からない。いや、ないと言ってもいい。

(バミューダ、キミに寄る辺はないのか?君の心は一体どこにいる……?)

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