第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【アヴァン 】
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てブリューヌ王宮で遭遇した経験から告げた。あの時、『光華』の錫杖の一振りがなければ命を落としていただろう。
己の発言からマスハスは、自領土に残されているオードの民が気がかりで仕方がないはずだ。同じ境遇であるオージェ子爵も例外ではない。今では、奴隷のような扱いを受けているのか?民の生活はどうなのか?そのような安否の情報を求めることに飢えつつある。
そのような彼等が、いかなる苦渋の中で申したか、凱にも十二分に分かっている。凱とてこの『孤立無援』に感じられる状況を、何とか打破したいのだ。
――銀の逆星軍と対立したときからずっと、銀の流星軍は敗走の連続であった。
出来る限り物資を確保しており、水以外なら何もしなくても数日を食いつないでいける糧食が手元にある。
だが、今後はどこからか補給も当てにできず、全てを自力で調達しなければならない。戦姫不在のまま、ライトメリッツ帰還は果たせない。自ら敗北を告げるような行いこそ、奴ら逆星の思うツボだ。
ひしひしと……孤立した現実を思い知らされる。
ジスタート兵からすれば、元々アルサスの伯爵に「領土を守る為に力を貸してくれ」と言われた、雇用兵にすぎない。リムの戦姫不在が通達されるまで、そう思っていた。
――今は違う。
ブリューヌ、ジスタートの国境を、習慣を、そして理念さえも越えて、『全軍内部をひとつのまとまった構成員』として、彼等は結成された。
戦姫様を――!ヴォルン伯爵を――!俺達が――!俺達の拠り所を――!助けたい!!
明日という光が閉ざされし世界ブリューヌ。その明日の光を取り戻す為に。
ティグルの明確な目標があった先ほどの戦いの旅とは違い、今度は至極簡単な理由で戦おうとしている。はっきりと目標地点が見えているわけではないのだか。
「――リム」
隣から、フィグネリアがさり気なくリムの名を告げた。
「アルサスにテナルディエがいる可能性は十分あると思う。ザイアン=テナルディエ……この坊やのいう事を信じるわけじゃないけど……ヴォージュ山脈の山岳部にあるアルサスなら、拠点として申し訳ないはず。私なら、誰にも咎められることなく軍備を整える立地条件として、間違いなくここを選ぶね」
身にまとう衣装のように、彼女らしい意見だとリムは思った。地図の端から端まで――そして遠くを見渡して、それでいて決断を加速させて狙いすます『隼』のように。
それに、アルサスはちょうど山脈を挟んでジスタートと隣接している。
凱は以前フィグネリア同席のもと、ヴィクトール王に銀の逆星軍の予測経路を説明していた。『陸』と『海』から攻め立てる、多方面進軍という作戦。
『情』の面で軍は動かない。『理』の面で説くしかないと踏んだフィグネリアの意見だった。
「俺からひとつ――」
今度は凱が告げた。
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